代表です。
昨日ですが、都内で大人の発達障害について講演させていただきました。
その中で、話題に上ることも多い、感覚過敏についてお話をしています。今日はそれについて少し。
ありがちなのは、照明や日光、匂い、味覚や口の中の食感、衣服の触感(特に丸首の部分とか)、人との接触、周囲の話し声など。
以前テレビに出ていた女性は水の流れる音がとても辛いと仰っていましたが、そういった過敏さが無い人にとっては、驚きとともに、共感しにくい部分でもあり、「慣れたら大丈夫なんじゃないの?」と思うところでもあります。
ちなみに、アメリカのDSM-5という診断基準ではASDの項に、「感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味」と記載があります。感覚過敏がある=ASDではないので、そのあたりは注意が必要。*1どのような診断がつくかはさておき、感覚過敏があると非常にキツイということが多くの人に認識されたら、と思うところです。
代表の個人blogには一度書いたことがあるのですが、感覚過敏はそれをもって社会適応が妨げられ得るものです。なので、それに対しては、自覚とともに、周りの理解や自分の対応が必要になってきます。
感覚過敏への対応
これは講演でお見せしたスライドですが、どうでしょうか。
感覚入力を減らし、耐えられる程度に抑えるデバイス(道具)は積極的に使用できると安心できるはず、と思います。多分、他にもあるので、それは読者の方から教えていただきたいのですが...
薬...私の知る限りこれを服薬すればというエビデンスは残念ながら無いんですよね。ですから、経験的に効果を期待できるかどうかというのを挙げています。効果があればいいですが、効果無ければ早期に止める、撤退するのが良い心がけかと。
どちらかといえば一番重要なのは環境整備ですよね。
周囲の理解を得ることが必要、なはずです。
馴化、慣れることはできるかどうか...答えは難しいけどtryはしてみる、というしか無いかな...これも例えば大きい音でパニックになるということがあったりしますが、成長とともに緩和され、中には無くなる方もいます*2よね。そう考えると「慣れ」が無いとはいえないんですが、とはいえ、周囲がそれを期待したり強要するのはNGでしょう。本人に意欲があったときに少しずつtryして欲しいところです。
特にありがちなのは、口腔内の感覚に敏感で、食感による好き嫌いの激しい子に給食の完食を求めることでしょうか...これは本当に止めてほしいですね。
時に誤診も導いている
感覚過敏は時に誤診につながります。
特に多いのは聴覚過敏による訴えを幻聴と捉え、統合失調症と誤診されることではないでしょうか。
例えばこんな例です。
そう、この方の場合は、聴覚過敏がベースにあったんですよね。進学後の周囲との関係が悪く、「自分は変なんだ」「私を見て笑っているに違いない」みたいな気持ちが大きく影響して、こう言っているとしか思えないことが幻聴という表現につながったのだと思います。もちろん、本当に統合失調症を発症した可能性もありますが、状況特異的で 、幻聴や妄想が発展することもありませんでした。一方で、幼少期からの問診をするとASD的エピソードが幾つも出てくることで、診断はASD、自閉症スペクトラムと変更し、その後就労支援に繋がりました。
そんなわけで、感覚過敏はその認識と対処が大変重要です。
支援者的立場にある方は、どうぞ軽く見るわけでもなく、またどうするとお互いが過ごしやすくなるかを考えてみてください。お互いが、なので当事者の方もどうするとより良く過ごせるか、過敏症状が和らぐことができないかは、主治医とも相談しつつ考えてみるとよろしいかと思います。
NHKの発達障害特集でも一番に取り上げられていたのは感覚過敏についてでした。