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ADHDの女性は見逃されていることが多いのはなぜだろう_(2)

代表です。

 前回webの記事に関して書いたところ、皆さんの関心がうかがえました。

多分それだけ実感に合う話題だったのだと思います。

今日もこちらの記事から、前回の続きです。

 

記事内容を紹介しつつコメントさせていただきます。

(そのまま全部の訳出ではないです)

www.additudemag.com

 

 

さて、前回の続きですが、ある26歳の女性が紹介されています。

アメリカはユタ州の、3人のお母さんです。

 

長年不安とうつに苦しんできたけれども、理由はわからなかったと。

とりわけ、3人目の子どもを身ごもっているときには、うつで入院もし、医者は抗うつ薬を処方したが全く効かなかったと。そして産後はとにかくしょっちゅう切れていたと。調子いいと思った直後には怒り狂うようにバランスを崩していたようですね。

 

転機はあるクリニックで気分障害研究に参加したとき。抗ADHD薬のコンサータを服薬したときに変化を感じたそうです。

The medication seemed to make her thinking “more logical.” She was less forgetful, less edgy. “I’m just generally in a better mood,” she says. “I feel happy. I don’t blow things out of proportion.”

服薬することで「より論理的」思考となり、忘れ物が減り、穏やかに(丸く)なった。「全体にいい気分でいられるようになり」「幸せを感じるし、大げさに騒がなくなった」と。

それにつれて家族との関係も改善し、社交場面で気詰まりを感じることも無くなったとのこと。

 

 

こういう経験は珍しくない

そう、この後Nadeau先生が言うんですが、こういった経験は珍しいわけではないんですよ。日本にいると、女性はとりわけ「きちんとしている」ことへのプレッシャーが大きく感じますよね。でもそれは、自由で色んなことを気にしないで済んでいそうなアメリカでもそうらしいですよ。

“The pressure on women to be organized, self- controlled..., is a societal expectation that’s very deeply ingrained,” ...women are often not forgiven for these types of things. With a man, they’ll say, ‘Oh he’s so busy, of course he forgot.'”

テキパキきちんとしていること、自己制御できていることへのプレッシャーは、女性に対する期待として深く社会に染み込んでいるし、女性には子どもをサッカーに連れて行くの忘れてた、みたいなミスが許されない。一方で男性がそんなことをしても、「忙しいんだから、忘れてもしょうがないわよ」みたいに許されてしまう、と。

 

確かに、私もそんな気がします。普段遥かに多い量を妻がやっているにも関わらず、留守番を一晩任せられるだけで「スゴイ旦那さんね」みたいに言ってもらえるような...日本だけではないんでしょう、きっと。

 

経済的コストと失われる機会

ADHDであること、は実はコストがかかります。やはり特性的に物を失くしやすい。失くせば、買い戻すためにお金がかかります。また、「失くした〜」と思って探せば、例えあったとしても、探すのにかけた時間の損とか、駐車券などは余計にお金がかかることもありますよね。

ただし、最も残念なのはきっと機会の逸失でしょう。記事ではある女性の例を挙げています。

 

Hawkinsさんは、59歳で3人の子持ち。ADHDがあるんじゃないかなと長く疑ってはいたけれども、診断されたのは40になってから。それまでずっと怠け者とかだらしないと思われていたことを後悔しています。でも一番残念なのは、大学に行く機会を失ったことです。高校卒業後すぐに結婚したのですが、もし早い段階でしっかりと診断され、治療の機会を得ていたら、大学に行っただろうと感じているのです。

 

未来への希望

記事中の2人の医師の言葉を合わせて紹介します。

・ちょうど医療界はADHDが女の子にとっても大きな問題であり、成人期に至るまで問題を引きずるものであると気づき始めている。

・ADHDを持っていると疑う女性は自覚すべきであるし、この領域のプロに相談すべき。

・相談相手の医師は、その資格よりも、女性のADHDについて理解と経験があることのほうが重要。

・うつな気分で、うつ病の診断治療がされるのは合理的だが、もし治療が進んでも、うつ以外の点に問題があるようなら(先延ばし傾向、時間管理の問題、遷延する物忘れなど)、(うつ病以外の)診断を疑ってもいいかもしれない。

・そうしたときに、自分はADHDかもという話を聞き入れてもらえず、そういった視点に気づいてもらえないとか尊重されないのであれば転医を考えるべき。

 

こういった指摘は日本にもそのまま適用可能と考えます。

特に最後の「転医の勧め」ですが、最初の医師の言葉を絶対視する必要はなく、時に転医は必要です。「後医は名医」という格言があり、あまり上手く行っていないということも含めて情報を沢山得られる「次の医者」は、正確な診断にたどり着きやすいのです。

 

最後に記事は、たとえ、診断がその人の人生の遅い時期になったとしても、その知識を役立たせることができると結んでいます。

Lyle Hawkins, the 59-year-old mother of three, recognized many of her ADHD behaviors in her children. ...“If they had not had me for a mother,” she says, “they would have fallen through the cracks.”

先ほど紹介した59歳の女性は、3人の子どもたちにも自分のようなADHD行動があることに気づいています。曰く、「もし彼らの母が私でなかったら、彼らも(私と同じように)見落とされていたでしょう」と。 

 

 

大人のADHD ――もっとも身近な発達障害 (ちくま新書)

大人のADHD ――もっとも身近な発達障害 (ちくま新書)

 

 

ADHDに対する入門書です。

著者は昭和大学の岩波先生。「大人のADHDは見過ごされている」ということをよく仰っています。私もそう思います。記事では女性について挙げましたが、決して男性は見過ごされていない、というわけではなく、男性も見過ごされている例や、ADHD的特性を把握したほうが生活が上手くいくのではないか...という例はそれなりに外来に来られています。

 

ちなみに昭和大学といえばADHDやASDへのデイケアが有名です。

弊社もADHDの方に対しては、グループでのカウンセリング(保険診療ではないのでデイケアではないですが)をしておりますので、色んな悩みごと、困りごとを同じ悩みを抱える人と一緒に解決したいと思う方は是非考えてみてください。

 

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