【スマホ依存 (Smartphone addiction)について考える】
ライデック学術広報の佐原です。前回に引き続き“スマホ依存”について考えてみます。(私は依存(addiction)の専門ではないので)考察が甘い部分があるかもしれませんが、可能な限りデータや根拠のある情報を選んでみなさんにお伝えしていこうと思います。
今回の記事では、自分でできる簡易スマホ依存度チェックをいくつか載せています。スマホ依存はこれからますます社会問題になってくると思われます。気になる方は画像をダウンロードして使ってみてください。
自分はもちろん、「もし、我が子がスマホ依存になったら…」と考えると、ある程度の知識をつけておくのは重要ではないでしょうか。因みに私はスマホ依存予備軍ですが、スマホを部屋の外で充電するなどの工夫をしながら上手くオンとオフを切り替えています。
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前回の記事はこちら ⇛ スマホ依存 (Smartphone addiction)について考える_(1)
目次________________________
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【スマホ依存と発達障害の関係性について】
「発達障害者はスマホ依存になりやすい?」
その特性上、依存症(Addiction)と発達障害の関連性が高いことは疑う余地がありません。例えば、ADHDの報酬系や実行機能障害はインターネット依存症のリスクを高めています。これは以前に弊社のブログで取り上げたことがあるので、こちらも参考にしてみてください。
発達障害とネット依存を調査した研究の具体的なデータをいくつかピックアップして図にしてみました。
まずこちらの図では、ADHDとインターネット依存度(IAT)の関係を調べた複数研究のレビューを参考にして作成しました。研究によって多少のバラツキはみられますが、一貫して「健常者よりも依存傾向が高い人が多い(オッズ比がプラス)」傾向がみられています。総合的にみると、ADHD者の方が2.51倍“依存のハイリスク群”になりやすいという結果です。
岡山県で行われた中高生を対象にした調査(2017)でも、発達障害者はインターネット依存度(IAT)のスコアが高い人の割合が、一般の中学生よりも多いという結果が出ています*1。児童精神科通院中の中学生と対象は狭いものの、ASDやASD+ADHDの併存者も対象にしており、ADHDやASDの発達特性が依存症のリスクを高めていることがよく分かる結果です。
ASDに関して面白い考察がありました。この後詳しく紹介しますが、依存症の判定は基本的に“自記式”です。不登校の症例などでは、かなりの時間をインターネットに費やしていたにも関わらずスコアが低いということがあるようです。つまり、「客観的に自分の行動を評価することが困難」というASD特性が自記式の調査結果を曇らせている可能性があるというのです。
「依存に影響を与える発達特性が強いか否か」
発達障害に限らず、誰もがインターネットやスマホ依存に陥るリスクを持っていることは言うまでもありません。でも、国民のほとんどがスマホをもつ時代なのに、「依存になる人」と「依存にならない人」は何が違うのでしょうか。私はここに発達特性が大きく関わってきていると考えています。発達障害であるかどうかではなく、脳の機能が依存症のなり易さを決めているのではないでしょうか。
例えば、発達特性を持っているとこんなことが起こり安いと言われています。
- 報酬系の障害からゲームのガチャや刺激の強い動画にハマりやすくなる
- 対人交流の苦手さからネット上での交流を求める傾向が強くなる
- こだわりの強さから、興味のある特定の情報収集に膨大な時間をかけてしまいやすい
こうした特性を持っているがために、依存に陥ってしまった場合どうすれば良いのでしょうか。特定医療法人さっぽろ悠心の郷ときわ病院の館農勝氏は自身の論文で以下のように述べています*2。
「ネット依存の治療に加えて、自己特性の理解を促すなど、発達障害には特別な配慮が必要です」
報酬系に障害があり、日常の生活で得られる報酬が小さいとしたら…?対人交流が苦手で、本当はおしゃべりなのに日常生活で話し相手がいないとしたら…?スマホに夢中な本人だけの問題ではないでしょう。それらを無視して、依存している対象(ネット環境やスマホ本体)を除去することだけが正しいとは思えません。
※今回はスマホ依存と言いながらも、インターネット依存の調査結果をまとめました。前回の記事でまとめたように、スマホ依存とインターネット依存は異なるものとして考えるべきです。しかし、学術的な「スマホ依存 × 発達障害」に関するデータはまだ乏しいです。
【スマホがもたらす生活への悪影響について】
株式会社マイナビの「キャリア教育ラボ」というニュースサイトが非常に参考になります。ここでは記事を引用して、コメントを加えていこうと思います。
「スマホ使用時間が長いと学習能力が下がる」
東北大学と仙台市教育委員会が実施したアンケートから、数学のテストの点数と1日あたりの自宅学習時間、そして1日あたりのスマホ使用時間の関係性を表すデータを紹介します。
スマホの使用時間と成績はほぼ反比例する
1日あたりの自宅学習時間が2時間以上と回答した子どものうち、スマホの使用時間が1日1時間未満の子どもの平均点は75点、スマホの使用時間が2~3時間の子どもの平均点は65点、スマホの使用時間が4時間以上の子どもの平均点は58点となっています。自宅学習時間が30分~2時間の子どもや30分未満の子どもについてもおおむね同じ傾向が見られ、「自宅学習時間が30分未満」かつ「スマホを4時間以上使用する」と回答した子どもの平均点は48点にまで下がっています
スマホ使用時間が長いと、自宅学習時間が長くても成績が上がりにくい
前項でも紹介した通り「自宅学習時間が2時間以上」かつ「スマホを4時間以上使用する」と回答した子どもの平均点は58点となっています。「自宅学習時間が30分未満」かつ「スマホを全くしない(持っていない)」と回答した子どもの平均点が63点であることから、たとえ自宅学習時間が長くてもスマホ利用時間が長いと自宅学習時間が短い子ども以上に成績が上がりにくい(または下がりやすい)ことがわかります。
(引用元:キャリア教育ラボ)
この結果はなかなか衝撃的ではないでしょうか。単純にスマホを触る時間が長ければ、他のことをする時間も短くなるのだから当たり前だと思う方もいるかもしれません。ただ、スマホを長時間使ってしまうと、同じ勉強時間でも成績が下がってしまうという仙台市の学校の調査結果から推測されることは、スマホ依存度の高い人は「スマホを使っていない時間」も何らかの集中の妨げを受けているということです。
「スマホ(ネット)依存傾向は低い方が健康的」
総務省の調査(平成29年度 情報通信白書)によると20代のインターネット利用率は99%、そのうち88%がスマホでの利用がメインとなっています。この結果を受けて四国大学短期大学部の片山友子氏と兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科の水野由子氏が共同発表した論文「大学生のインターネット依存傾向と健康度および生活習慣との関連性」によって、スマホ依存が生活習慣に大きな影響を与えることが明らかになりました。
調査に使用された指標について
生活習慣と健康度を数値化するために論文内で用いられた評価指標について解説します。この論文では、調査対象者となった大学生188人のうちインターネット依存傾向が高い80人(58%)をⅠ群、インターネット依存傾向が低い58人(42%)をⅡ群として、次の2つの指標を使って調査を行いました。
DIHAL.2(健康度・生活習慣診断検査)
DIHAL.2(Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)によって、日常生活における心身の健康状態を把握することができます。健康度・運動・食事・休養の4尺度に分かれた47の質問項目に5段階評価で回答していき、各尺度の合計点数が高いほど健康的な生活を送っていると判断されます。
POMS(気分プロフィール検査) POMS(Profile of Mood States)では、緊張感・不安感(T-A、9項目)、気分の落ち込み(D、15項目)、不機嫌・イライラ(A-H、12項目)、活気・意欲(V、8項目)、活力低下や疲労(F、7項目)、混乱(C、7項目)の6種類の尺度を測定することができます。
調査結果 スマホ・ネット依存が生活習慣に与える影響
2つの指標の調査結果をまとめたものが次の表です。
この表より、DIHAL.2では全ての尺度においてⅠ群の合計点数がⅡ群を下回っていることがわかります。中でも、精神的健康度・運動意識・睡眠の充足度の項目において特に大きな差が見られます。
またPOMSではⅠ群はⅡ群に比べて緊張感・不安感(T-A)、気分の落ち込み(D)、不機嫌・イライラ(A-H)、混乱(C)の値が高い傾向を持つことがわかります。この論文から、インターネット・スマホの利用時間が長いと睡眠不足に陥りやすく、勉強をはじめさまざまな活動に影響を及ぼすことがわかります。また睡眠時間が不規則になることで運動機会の減少や食生活の乱れなどが引き起こされ、健康を損ねるリスクが高くなります。さらにインターネット・スマホの利用時間が長いと落ち込み・イライラ・混乱などのネガティブな感情が高まりやすくなることも明らかになりました。
(引用元:キャリア教育ラボ)
この記事をみて分かるのは、身体面でも精神面でも不調を生じやすくなっており、「スマホ依存 = 病気のリスク」ということです。依存している人と依存していない人では、全ての尺度において依存していない人の方が健康です。初めはちょっとしたイライラだったり、睡眠不足で済む話かもしれません。スマホの利用時間が長くなればなるほどそういった不調は大きくなります。たかがスマホ、されどスマホです。
日本の大学生を対象に引きこもりとスマホ依存の関係を調べた研究*3では、引きこもりのスコア( HQ - 25)と「インターネット利用時間」「インターネット依存尺度(IAT)」「スマートフォン依存尺度(SAS-SV)」に相関があることが報告されています。つまり、SNSやゲームに夢中になってスマホに依存していくと、同時に社会との繋がりが薄れて引きこもがちになりやすいということです。
「早めに依存に気づいて、節スマホ」
スマホの健康被害と聞くと、視力低下や肩こり、慢性疲労や運動不足による肥満などが浮かぶかもしれません。しかし、現実はもっとQOLを下げかねないような重大なリスクを孕んでいました。スマホ依存症の本当の怖いところは、不登校や引きこもり、そして長期間に及ぶ二次障害(不眠症、うつ病など)になることではないでしょうか。
依存というのは、自力で解決することが難しいケースがほとんどだと言います。周囲の親しい人間(両親や教師など)が「スマホはダメ」と突然禁止しても逆効果かもしれません。そもそも、現代社会はスマホが必須になってきているのに「使うな」というのは無理があります。アルコールや煙草、薬物とは異なり、断つことよりも減らすことを目標にすべきだそうです。
出来るだけ早い時期に「スマホを使いすぎていないか?」ということに本人であったり、周囲の人間が気づくことが大切です。明らかな健康被害がすでに表れてしまっているようなら、専門機関に相談すべきなのですが…スマホ依存外来は全然ありません(これから増えてくると予想されます)。現段階では、スマホ依存=インターネット依存=ゲーム障害のような図式が成り立っているので、インターネット依存外来に相談にいくことが最良の選択肢となりそうです。
【依存かどうか?判断基準について】
「まずは、自分で判断を」
そもそも疾病として扱われていないので、スマホ依存に使われる決まった公式な評価スケールはありません(少なくとも日本においては)。わざわざクリニックに行かなくても、ネット上に転がっている“スマホ依存チェックリスト”でも依存の傾向があるかどうかはわかります。
どんな評価スケールを使用しても良いのですが、可能ならば信頼できるものを使っていただきたい。日本国内でも、正式なスマホ依存評価尺度が開発され始めていて、その妥当性や内的整合性を研究している最中のようです。エビデンスのあるものを3つ紹介するので、「スマホ依存かも・・・?」という方は自己評価をしてみてはいかがでしょう。
- スマートフォン依存傾向尺度(Smartphone Addiction Scale ; SAS)*4
世界でも最もスマホ依存の研究が進んでいる韓国で開発されたスケールで、日本語訳されたものが臨床でもよく使われています。有名なYoungのインターネット依存尺度(IAT)とも有意な正の相関があり、十分な妥当性があると思います。33項目、6つの下位尺度(日常生活上の支障,ポジティブな期待,禁断症状,サイバー空間上の人間関係,過剰な使用,耐性)を持ち、インターネット依存の項目とスマートフォン独自の項目が上手に混ぜられていています。
上の表は、日本語訳された短縮版スマートフォン依存スケール(SAS-SV)です。スマホ使用などに関する質問に6件法(まったく違う~まったくその通り)で答えていきます。10項目しかないので簡単にチェックして評価できます。
この評価スケールを用いた研究を紹介します。北海道にあるときわ子ども発達センターの舘農らは日本の大学生573名(男性:180例、女性:393例、平均年齢:19.3±1.3歳)を対象にした調査を行い、平均SAS-SVスコアは、男性で24.4±10.0、女性で26.8±9.9という結果を報告しています*5。カットオフスコア*6で判断すると、男子学生の22.8%、女子学生の28.0%がスマートフォン依存に当てはまります。インターネット依存(IAT)はゲーム人口が多い男性の割合が多いですが、どうやらスマホ依存(SAS)は一貫して女性の方が平均スコアが高く、その割合も多そうです。*7
- 和歌山スマートフォン依存尺度(Wakayama Smartphone Depnedence Scale ; WSDS)*8
このスマホ依存尺度は和歌山県立医科大学によって携帯電話やインターネット依存の尺度を改良して開発された「日本で初めて作成・公開されたスマホ依存尺度」です。「ネットコミュニケーションへの没頭」「スマホの優先と長時間使用」「ながらスマホとマナーの軽視」という3つの下位尺度による21項目4件法モデルは内的整合性も高く評価されています。
中村学園大学の1年次短期大学生の間で行われた調査では、各下位項目と合計得点の平均が報告されています*9。
大塚絵里子らは、このWSDSの各下位項目と「スマホの使用時間」や「就寝前のスマホ使用時間」などの独自の調査項目を加えて相関分析をしています。非常に興味深い結果だったので、いくつか引用します。
・「『ながらスマホ』とマナーの軽視」の問18「電車やバスの中でスマホを使うことがある」では81.9%の学生が「該当する」と回答していた。「やや該当する」も加えると97.9%という極めて高い割合となり,通学中もスマートフォンが手放せない状況がうかがえる
・「スマホの優先と長時間使用」の問10「他にしなければならないことがあるのに,スマホをしてしまうことがある」では,「該当する」は37.5%,「やや該当する」も加えると86.8%となった。スマートフォンの利用が,学修をはじめとする日常生活へ及ぼす影響が懸念される結果となった
・「スマホの優先と長時間使用」の問11「スマホのせいで,夜更かしをしてしまったり,寝不足になったりすることがある」と問12「スマホを使う時間がだんだんと長くなっていると感じる」と,平日と休日の一日及び就寝前の使用時間との間に有意な相関がみられた
・平日, 休日に関わらず一日の使用時間と就寝前の使用時間に有意な相関がみられた
・「ネットコミュニケーションへの没頭」の合計と「いつも頭痛がする」との間に弱い有意の相関がみられた
・「『ながらスマホ』とマナーの軽視」の問21「電話やメールの着信がないか,無意識にスマホを見ることがある」と「いつもよく眠れない」の間にも弱い有意の相関がみられた
(引用元:大塚絵里子ら, 中村学園大学短期大学部研究紀要, 2018)
WSDSは携帯電話依存やインターネット依存尺度の項目の改変によって項目収集が行われたため、「スマホが使用できない不安」「禁断症状」など、スマートフォン特有の依存に焦点を当てて収集された項目ではないことは問題点として指摘もあります。また、スマホ依存群の高リスク群や要指導群の適切なカットオフ値が確立されていません。そのため、同年代の平均値と比較して高いか、低いか程度しかわからないというのが現状です。
- 大学生版スマートフォン依存傾向尺度(Smartphone dependency scale; SDS)*10
SDSは(私が見つけた中では)、日本語の最新の評価スケールだと思います。上の2つよりも、実際のスマートフォンの利用に焦点を当てた質問項目になっているのが特徴です。東京大学を筆頭に開発を進めているようで、今後さらに改良していくと述べられていました。
この評価スケールでも、全ての尺度において女性の方が有意に高い得点を取ることがわかっています。弊社でこの質問紙を使って調査してみました。20代女性心理士がやってみたところ、大学生の女性平均を大きく上回っていました(56点満点中38点)。因みに私(27歳男性)も33点で、一般の大学生男性よりも高い数値でした。他の女性社員らは25点未満でしたが、年齢ごとの平均値がわからないので評価はできません。31点だった松澤代表曰く「ある程度の知的な人間はスマホ依存にならないはずがない」ということでした。ただ、何かに集中している時、スマホのことで頭が一杯になったりはしないので、“依存として治療が必要な状態”とは異なっているようです。
このように、点数が高いからといって必ずしも依存になっている訳ではありません(低い方が良いのは間違いありませんが)。松島らの報告によると、精神的健康(GHQ12)や状態不安(STAI‒S)、特性不安(STAI‒T)との相関があったのは「自己像の揺らぎ(要因4)」だけでした。この項目は、自己否定感や自己嫌悪といった個人の特性に関わっており、不安の高さや精神的健康の悪さを表しているようです。
やはり、スマホ“依存症”としての判断を強めるには、その他のスケールも組み合わせないといけないように思います。大阪産業大学の研究では、スマホの依存傾向がマインドワンダリング*11、思考抑制*12と関係があることがわかってきています*13。つまり、大学生らが講義中にスマホをいじってしまうのは、無関係な思考が浮かんだり、意思に反する望まない思考が入ってきたりすることで「注意が別のことに移る」ことが原因なのかもしれません。
【まとめ】
「スマホ依存症は思っているよりも重症」
ここまで読んでみて、読者のみなさんはどう感じましたか?
「スマホで入院って大げさなんじゃ…」
「うちの子どもがゲームのしすぎで心配…」
「スマホ依存傾向高めかも…」
依存症と呼ばれるような状態は、皆さんの想像よりもはるかに重症です。この記事を読んでいる人のほとんどが依存症ではないと思われます。しかし、依存症でなくとも日常生活で困っていればそれは改善すべきだと思います。
ここで紹介した依存尺度は試しましたか?依存傾向が高いと、仕事や学業に集中できなくなるばかりでなく、身体面・精神面と不調になりやすく、不登校や引きこもり、そして不眠症やうつ病などのリスクを増大させてしまいます。得点が高かった人や依存的な自覚症状がある人は何かしらの対策を取ったほうが良いかもしれません。
「スマホの使いすぎ生活は改善しよう」
スマホを見る時間は国民全体で増加傾向にあります。そして、20代や30代はその傾向が顕著で、1日5時間や6時間は普通になってきました。これまでのネットゲームよりもはるかに手軽にスマホゲームは遊べてしまいます。“ポケットから取り出すだけ”で脳の報酬系が満たされるようなものがあれば依存していくのは当然かもしれません。
特に発達障害があると、スマホ依存になりやすいことがわかりました。その理由は先に述べた通りですが、発達障害の脳特性(報酬系の障害、社会性の乏しさ、こだわりの強さなど)が深く関与していました。スマホに依存せざるを得ないような生活をしているかもしれません。そういったことが背景にあることを頭に入れながら、スマホの利用時間を減らしていくことが重要だと考えられます。
「スマホとうまく付き合っていくためには」
弊社でも「(依存症ではないが)スマホの使いすぎで困っている人」に対してプログラムを行なっています。アドバイスしているのが、次の3点です。
- 使いすぎを自覚する
- 使いすぎを制限する
- 使わなかった時の報酬を受け取る
まず、スマホには「この1週間でスマホ画面を見た時間」というのを記録する【スクリーンタイム】という機能があります。私はつい先日、iPhoneでこの機能があることを知りました(iOS12.0より最新であれば標準搭載)。
設定方法⇛https://support.apple.com/ja-jp/HT208982
また、自分がどのアプリに何時間の時間を消費しているのか知ることができます。これを知ることで「対策」が立てられます。例えば、特定のカテゴリのアプリの使用時間を決めたり、指定した時間にしか起動できないようにするなどの制限をかけることができます。もういっそのこと、自分のスマホに自分の知らないパスワードで制限を設けてしまえば諦めがつくでしょう。
視界に入ってしまったり、手に取ってしまうことでだらだらと使い続けていまうのがスマホの恐ろしさです。SNSのアイコンはホーム画面からは遠去けたり、本当に必要な連絡を除いたアプリの通知は全てオフにするなどの工夫ができます。 加えて、絶大な効果を誇るのが物理的な対策です。「枕元にスマホの充電器は置かない」 「寝室にはスマホを置かない」などの対策で就寝前のスマホの利用時間はかなり減らせます。
スマホの使用時間を思い通りに減らせた時には、自分にご褒美をあげましょう。月間カレンダーに印をつけるだけでも違うかもしれません。脱スマホを目指さずとも、節スマホを目指して上手に付き合っていきましょう。
「スマホはなくても大丈夫」
わたしも大学生の頃、スマホゲームで生活が崩れそうな体験をしたことがります。日々、ゲームに明け暮れて、食事中や友人との会話中もゲームのことが気になる時間が続いていました。特に、チャット機能のあるネットゲームは危険だと思います。スマホを落としてデータが無くなってから、ゲームのことは全く気にならなくなりました(一時的な喪失感はありましたが)。夢中な時は「生活になくてはならないものだ」と思い込んでしまうのですが、熱が冷めると「大したものじゃなかった」と思えるようになります。
スマホはないと困るものですが、なくてもある程度は生活できることも確かです。社会との密接な関わりをもつ中で、仕事をしたり、人と直接会ったり、趣味に勤しむことで生活が充実していれば、スマホに費やす時間は必然的に少なくなるのだろうというのがわたしの実感です。
前回の記事はこちら → 【スマホ依存 (Smartphone addiction)について考える】 - RIDC_JPのブログ
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
本記事は株式会社ライデックによって作成されました。できるだけ、簡単でわかりやすい言葉で、英語を日本語に意訳していますが、データの解釈や内容表現に誤りがあれば、コメント欄にてご指摘ください。また、弊社HPやTwitterにてさまざまな発達特性情報を発信していますので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。
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*1:So R. et al., 2017
*2:児童青年精神医学とその近接領域Vol.60, No.1, p31
*3:Tateno M et al., Frontiers in Psychiatry, 2019
*4:Kwon et al., 2013
*5:Tateno M., Psychiatry Investigation, 2019
*6:点数が31点以上(女子は33点)になると、スマホ依存(Smartphone Addiction)の危険性があると診断される。
*7:日本の女子大生は「つながる安心感(他者とつながりを保つことで安心すること)」を求める傾向があり, それがSNSの長時間利用や依存に影響することがいわれているようです
*8:戸田ら, 2015
*9:大塚絵里子ら, 中村学園大学短期大学部研究紀要, 2018
*10:松島ら,2017
*11:マインドワンダリング傾向尺度(Mind-Wandering Questionnaire; MWQ)や自発的思考傾向尺度日本語版(Daydream Frequency Scale; DDFS)で測定された
*12:Thought Control Ability Questionnaire(TCAQ)で測定された
*13:河野志織ら, 2018