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目次
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【前書き】
視覚過敏で困っていました
こんにちは。株式会社ライデック(発達特性研究所)の学術広報 佐原です。
夏も近づき、日差しが眩しくなってきましたね。
私は光にとても弱いので、外を出歩くのが億劫になりがちです。
この時期、外に出たくない理由が“暑いから”よりも”眩しくて目が痛いから”になります。
例えると、スキー場の雪面の反射が痛く感じる現象が普通のアスファルトで日常的に起きている…そんな感じです。
同じ日差しでも目を開けて歩いている人たちを見ると
「何も感じない人が普通なのか」と自分の感じ方が周囲と異なることを実感します。
大人になるまで気づかなかった
残念ながら、私が子どもの頃はこういったことへの配慮はありませんでした。
自分自身がそれが視覚過敏であることに気づいていなかったこともあります。
集合写真撮影で「眩しすぎて」1人だけ目を開けていられなかったのも、
ただ目が弱い(色素が薄い)せいだと思っていました。
自分の感覚が世界の全てで、その世界が普通なわけですから、
他人の感覚との違いに気づくはずもありません。
不思議なことに、体調が良いと気にならないんですが、
体調が悪いとちょっとした光でもめちゃくちゃ気になります。
今では仕事中でも…光が気になった時は無理せずに2〜3時間休むことにしています。
学生時代は部活動や運動会で苦しい思いをしてきました。
体育の授業でサングラスなんて掛けられませんでしたから(笑)
大人になって、サングラスや色付きメガネを着けられるようになってからは、
ずーーっとストレスだったものがとても楽になりました。
他人はもっと気づきません
自分の特性を知ることができても、次の一歩には大きな壁があるように感じます。
その特性はただ口に出しても簡単には相手に伝わらないので苦労します。
発達障害の認知度も上がり、“感覚過敏”という言葉を目にするようになりました。
それでも、感覚過敏を持つ人たちにとってはまだまだ生きづらいのが日本社会の現状だと思っています。
(聴覚過敏マーク(株式会社石井マークさんより))
日常の些細な音や光にストレスを感じつつも、自分なりの対策を講じて我慢しながら暮らしています。
この記事を通じて、”感覚の違い”で苦労している人たちがいるということを知ってもらえたら嬉しいです。
【視覚過敏の特徴】
視覚過敏は感覚過敏の一種です
感覚過敏という単語を聞いたことがありますか?
読んで字の如く、特定の感覚刺激に対して体が過剰に反応することをいいます。
例えば、同じカラオケルームにいても、耳を塞ぐほど「大きい音」に感じる人もいれば
「普通の音」に感じる人、むしろ「小さい音」に感じる人もいます。
私はスマホの明るさを自動で調光させると「明るすぎる」と感じてしまいます。
電源を入れた時のApp○eのリンゴマークが目に刺さるように痛く感じるので、
親指で隠して見ないように意識しています。
同じ刺激でも感覚の受け取り方は人それぞれ違います!
その偏りが人に比べて大きすぎたり小さすぎたりすると、
学校や職場など日常生活でも困る場面が出てきてしまうんです。
感覚過敏はいろんな感覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)過敏の総称です。
また、複数の感覚が過敏だったり、逆に感覚がにぶい(感覚鈍麻)こともあります。
視覚過敏は聴覚過敏に次いでメジャーな特性
発達障害情報・支援センターのWEBサイトでの調査(平成30年8月〜平成31年1月)によると、
発達障害者431名に「つらい感覚は?」と聞いたところ下の図のような結果になったそうです。
聴覚過敏と視覚過敏が1番目と2番目につらい感覚というアンケート結果でした。
人間は「目」と「耳」の情報にほとんど頼り切って生きています。
これらの感覚が過敏になると、日常でつらさを感じる場面が多いのかもしれません。
Twitterで「どの感覚過敏で困っていますか?」というアンケートが取られていました。
(※回答者が誰なのか不明なのであくまで参考程度ですが)
これを見ると、聴覚過敏の人の割合(約60%)が1番多いみたいですね。
聴覚過敏は1番つらさを覚える場面が多いことから自分の特性に気づく人が多いともいえます。
例えばこんな場面で困ります
ここでは、視覚過敏に的をしぼってその特徴を紹介していきます。
上のイラストはmorikanokoさんが作成した視覚過敏の理解を求めるものです。
とても分かりやすく視覚過敏の特徴が描かれていたのでお借りします。
主に、視覚過敏は次の3つの特徴に分けられます。
- 光(直射日光、LED、蛍光灯、カメラフラッシュ、カーライトなど)が苦手
- 色(コントラストの激しいもの、濃いもの、蛍光色など)が苦手
- 目から入る情報量の多さに疲れやすい
私は「1.光が苦手」です。例えば、こんな場面で困っています。
- カーテンの隙間から差し込む光が気になって勉強に集中できない
- 蛍光灯を直接見ると、気分が悪くなったり、頭が痛くなったりする
- 輝度の強いディスプレイで文字を読んでいるととても疲れる
- 車の運転中、前の車の光の反射が非常に不快になる(イライラする)
- 寝る時に街灯の光が僅かでも入ってくると眠れない
また、「3.目から入る情報量の多さに疲れやすい」もあります。
例えば、こんな場面で困っています。
- 人混みなど、動くものが多い場所(特に渋谷)で気分が悪くなる
- ドンキやビレバンといった情報量の多すぎるお店で商品を探すと疲れる
一方で、私は「2.色が苦手」は感じたことがありません。
当事者さんの体験談では、こんな場面で困っていると書かれていました。
- 買い物で陳列された商品のカラフルさに疲れる
- 白い紙と黒い文字のコントラストが強くてチカチカする
これらの特徴は人それぞれです。
見てわかるようにこれらのストレスは我慢できるレベルなんです。
「疲れる」「イライラする」「気分が悪くなる」
相当に視覚過敏が強くなければ、本人も気づかない程度のことです。
ただ、我慢してストレスを溜めていることも事実です。
このようなストレスが毎日続くようであれば対策が必要になってきます。
【視覚過敏の医学的な見解】
病気なのか?(医学的な定義はあるのか)
医学的に「視覚過敏」は正式に定義された病名ではありません。
また、国際的に見てもDSM-5で定義されているわけでもありません(※)。
※”感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ”は自閉スペクトラム症(ASD)の基準の一つに挙げられていますが、それ自体が疾病の対象になっている訳ではありません。
そこで今回は、視覚過敏に関連する文献数の推移を調査しました。
領域ごとに異なった呼称があるので、今回は名称を分けて検索をかけています。
「Sensory Modulation Disorder」もしくは「Sensory Over-Sensitivity」
という大枠で検索すると1974年~2020年の47年間で3192件でした。
感覚過敏の研究数は年々増えていて、近年の感覚過敏の認識の高まりに一致します。
また、「Photophobia」という単語も同様に文献数が増えてきていました。
これは羞明という単語の英訳で、眼科領域で使われる単語です。
光を眩しく感じる脳神経のメカニズムについても研究が盛んに行われていそうです。
一方で、「Scotopic Sensitivity Syndrome」や「Irlen Syndrome」のように
視覚過敏単独の文献は非常に少ないことが分かります。
つまり、視覚過敏は一つの病気として扱われず、研究もあまり進んでいないようです。
次に、日本国内の論文を調査してみました。
これを見ると分かるように、「視覚過敏」という言葉の文献はたった7件しかなく、
国内でも研究はあまり進んでいないことが分かります。
また、「光の感受性障害」や「アーレン症候群」も2件ずつしかありませんでした。
名称が統一されていないことが原因だと思いますが、想像よりもかなり少ない数です。
これらの研究は図のように部分的に重なっているところがありそうです。
症状としては光(一部は色)に対する過敏さで一致しているからです。
名称ごとに研究に特徴があって、例えば…
- 羞明は眼科疾患が主な対象、治療に関する研究が多く、かなり医学寄り。
- 光過敏は片頭痛やてんかんなどが対象、薬物動態などの研究が多く、やや医学寄り。
- 感覚過敏/視覚過敏は自閉スペクトラム症などが対象、子どもの症例や学校での対応検討などの研究が多く、どちらかといえば心理・福祉寄り。
- アーレンシンドローム/光感受性障害は限局性学習症などが対象、眼鏡レンズの効果検討などの研究が多く、教育寄り。
私は視覚過敏ですが、これは片頭痛に随伴することがよくある「光過敏」です。
また、甲状腺機能亢進症に随伴する「羞明」も視覚過敏と類似しています。
※分かりづらいのでここでは全て「視覚過敏」に名称を統一していますが、これらはそれぞれに違う部分があり、完全に同一ではありません。
つまり、
発達障害の領域では特性の一つとしての視覚過敏
医学領域では基礎疾患の症状の一つとしての光過敏や羞明
といった具合に名称や内容に違いがあるようですね。
視覚過敏=発達障害なのか?
感覚過敏と聞いて発達障害とイコールにすることがあります。
確かに発達障害者がなんらかの感覚過敏をもつ割合は非常に高いです。
しかし、発達特性が強くない人でも特定の感覚に過敏なことはあります。
特に、視覚過敏に関しては目の問題(羞明など)や神経の問題(片頭痛など)もあり、
視覚過敏の症状をもつ=発達障害の特性をもつ、という等式は成り立ちません。
ただ、ASD者に視覚過敏で困難を感じる人が多いのもまた事実です。
イギリスのASDの学生ら(12〜16歳)にアンケートを取った研究では、
16人中9人(56%)が視覚に困難があると答えています。
Studies have shown that it may not be as prominent as other sensory problems—notably hearing and touch—
研究では、(発達障害者の視覚過敏の問題は)聴覚や触覚などの他の感覚の問題ほど顕著ではない可能性が示されています。
but one small study has pegged that more than half of autistic adolescents have visual processing deficits, including sensitivity to light.しかし、とある小規模研究では自閉スペクトラム症の青少年の半数以上が光に対する感受性を含む視覚処理障害を抱えているとしています。
(Light Sensitivity and Autism Spectrum Disorder - TheraSpecsyより)
つまり、
発達障害者の中には視覚過敏症状がある人が多い
症状(光過敏、羞明)が出る病気は他にもたくさんある
くらいの認識でも間違いはなさそうです。
脳の問題なのか、それとも目の問題なのか?
結論から言うと、光を眩しく感じる原因は分かっていません。
私は眼科に詳しくないですが、Webで調べた情報を簡単にまとめて考察してみます。
目の病気だとする羞明と視覚過敏を完全に切り離して考えている人もいますが、
私は視覚過敏と羞明は類似の症状だと考えています。
現に明らかな眼の病気がなくても、羞明の症状を訴える人は多いようです。
例えば、線維筋痛症や片頭痛、自閉スペクトラム症などの疾病を持つ人では
高い割合で視覚過敏(羞明/光過敏)を随伴しています。
これを眼科由来の症状と区別して中枢性羞明と呼んだりしています。
Wikipediaの羞明の記事を参考にして、考えられる病気をリストアップしてみました。
図を見るとわかるように、明らかな眼の病気以外にも
多くの病気が「光を眩しく(痛く)感じる」症状を引き起こす可能性があります。
眼科医の堀口浩史氏の話の中で「光を痛く感じる」メカニズムが報告されています。
「網膜の光受容器からの視覚系(図の左)」
「角膜・虹彩・硬膜などに存在する侵害受容器からの体性感覚系(図の右)」
の二つの神経回路から成る仮説モデルを報告しています。
強い光が痛い、不快に感じるといった感覚は視床の過活動が原因だとする説が有力です。
また、ASDに視覚過敏が多いという理由について、そのメカニズムも探られています。
Those with autism have also been found to have physical differences in the structures of their central nervous systems.
⑴中枢神経系の構造に物理的な違いがある
There is evidence that they also have a lower neurological threshold for environmental stimuli, including light.
⑵光を含む環境刺激に対する神経学的閾値が低い
Other findings similarly suggest that is not light which is the direct trigger, but instead an added complication that is enhanced by other environmental and emotional stressors.
⑶他の環境や感情といったストレッサーによって感覚が強化される(感覚の過負荷)
( 引用元:https://www.theraspecs.com/blog/light-sensitivity-autism/)
つまり、
視覚過敏は脳の神経活動の問題である可能性が高い
と現時点では考えられています。
視覚過敏の有症率、検査法
視覚過敏の有症率を考えてみます。
過敏症状の原因疾患ごとに分類して調査しました。
自閉スペクトラム症(ASD)に付随することで知られている感覚過敏。
ASD者の中にはどれくらいの割合で視覚過敏の症状を有するのでしょうか。
学童らを対象とした有症率の調査では、次のようにまとめられています(川崎ら, 2018)。
- ASDの約40~50%に過敏を認める
幼児期から学齢期初期にその頻度が最も高い
加齢に従って減少傾向を見せ青年期では20%程度となる
その中でも、視覚過敏はどれくらいなのか。
ASDと診断された(もしくは障害自認を有する)高校生以上の75名に対して、
独自チェックリスト(490項目)で感覚過敏を評価した東京学芸大学の研究があります。
ASD者の視覚過敏の該当率は17.15%で前庭感覚に次ぐ多さです。
これは、大学・大学院に在学している「非ASD」の学生113名と比較すると、
およそ20倍の割合になります。
次に、片頭痛に付随することで知られている光過敏。
片頭痛持ちの人の中にどのくらいの割合で光過敏症状を有するのでしょうか。
獨協医科大学神経内科の辰元宗人氏の講演資料によると、
- 片頭痛の有病率は8.4%(女性12.9%、男性3.6%)
- 頭痛時に光過敏を有する人は56%
片頭痛の場合、常に光に対して過敏になっている訳ではありません。
体調が悪い時に光が頭痛を誘発したり、頭痛が起きた時に
光が症状を増悪させるといったケースが目立ちます。
こうして見ると、ASDの視覚過敏と片頭痛の光過敏は違いが明らかですね。
ASDの視覚過敏には色の濃さや文字が動くといった症状も含まれますが、
片頭痛の光過敏は単純に強い光に対する症状のことだけを指しています。
ここからは、感覚の特性を調べるための検査ツールを2種類紹介したいと思います。
一つ目は、「JSI-R(Japannese sensory inventory revised)」です。
これは、作業療法士の太田篤志氏によって開発された感覚過敏全般についての質問紙で、
なんとWebで無料公開されています!(JSI-R JSI-3D 日本感覚統合インベントリー)
行動質問項目は147項目(前庭感覚・触覚・固有受容覚・聴覚・視覚・嗅覚・味覚)、
各々の行動の日常生活における出現頻度を5段階で評定する形式になっています。
注意点としては、評定者によって結果が違う点、あくまでも目安であるという点です。
ですが、自宅でも出来る感覚過敏の行動チェックリストとしては非常に有用です。
もう一つは、「感覚プロファイル(Sensory Profile:SP)」です。
こちらはIQ検査なんかと同じで、医療機関で実施するものになります。
発達障害の診断にも有用でよく使われています。
感覚過敏だけでなく、感覚回避や感覚探究、低登録の4項目で得点化されます。
質問項目は125項目(聴覚・視覚・触覚・前庭覚・複合感覚・口腔感覚)と少なめですが、
短縮版(SSP)、乳幼児版(ITSP)、青年・成人版(AASP)のようなシリーズが豊富なのも特徴です。
感覚プロファイルは、子どもから大人まで幅広く検査出来ることが実証されています。
(児童青年精神医学とその近接領域(Vol.57, No.1), 平島太郎, 2016)
こちらもJSIと同様に、保護者などが質問票に回答する他者評定式をとっています(成人は自記式)。
そのため、検査の回答自体は非常に簡単です。
ただ、結果の解釈や活かし方は研修を受けた専門家でないと難しいかもしれません。
大事なのは、検査を受けることではありません。
検査の結果を有効活用することです。
例えば…
・検査の質問に向き合うことで保護者や支援者が本人の感覚を知ることができます。
・本人が結果を知ることで、生活の困りごとへの対処がしやすくなります。
・また、検査結果を伝えることで学校や職場で理解が得やすくなったりします。
このように、支援における選択肢の幅を広げることができます。
有効な治療法
メカニズムが明らかではないので、薬による有効な治療法は確立されていません。
ただ、明らかな基礎疾患がある場合(てんかんや片頭痛など)、
その疾患の治療薬を使うことで光による痛みや不快感は軽減できます。
(発達障害のように)基礎疾患の治療が難しい場合、色付きレンズ付きメガネが有効です。
ただ、闇雲に暗いサングラスをかけるのは逆効果なようです!
知らなかった…
Digreらの研究(アメリカ)によると、室内で暗い眼鏡をかけることで
自らの光受容体を暗順応させてしまって光に対する感度を悪化させてしまうそうで、
特定の波長をカットする眼鏡をかけた方が良いそうです。
具体的には、明るさの知覚経路に関わっているといわれている、
メラノプシン神経節細胞のピーク光波長(480nm)をカットする方法が推奨されてます。
この480nm前後の光が痛みを引き起こしていると考えられています。
Photophobiaのために作られた遮光眼鏡(FL-41 glasses)があります。
この眼鏡レンズの最大の特徴は、普通のブルーライトカットレンズと比べて、
およそ25倍も480nm付近の青色光をカットすることにあるようです。
アメリカの会社が販売していますが、購入者の評判はとても良かったです。
(以下、購入者のレビューより一部引用)
Not only are the Therspecs amazing high quality and beyond my expectations, but the customoer service is as well! I plan in the future to recommend these glasses to anyone needing, like myself, affordable relief from migraines and all problematic lighting including fluorescents, screens, and sunlight!
また、日本でも視覚過敏の方に好評な遮光メガネが販売されています。
奈良県にある眼鏡店”joyVision奈良”を営む松本康志さんによると、
視覚過敏の人にはローデンストックロードの眼鏡がオススメだそうです。
当店のお客様で、アーレンシンドロームの可能性が示唆されるお子様や視覚過敏が強い方に対し、ローデンストックロードをお試し頂いたところ、非常に高い評価と非常に良い反応を得ています。
今まで、アーレンシンドロームの方策として濃色のカラーレンズを装用していたお子さんにおいても、淡色のローデンストックロードの方が全然見やすくなるなどの反応が殆どです。
「光が楽に見える」
「薄い色なのに全然今までと違って楽に見える」
「今までは濃い色でないと字が動いて見えたけど、ロードなら色もつかず自然に見えて字が動かなくなった」
「平面だった世界が立体感ある世界になった」
(中略)多種多様なレンズがあるなかで、9割以上の方が明確な差を認めるレンズに出会った事がありません(明確に優しく見える・明確に見たい対象と背景がクッキリ分化される/92%)。
(引用元:joyVision奈良HP)
画像を見ると、確かに昼でも夜でも見やすくなっていて驚きです…!
一度、こうした専門店でしっかりと検査をして、自分の眼に合った眼鏡を付ければ
世界が180度変わって見えるかもしれませんね。
最後に、こういった特殊な遮光レンズの眼鏡を使用することによって、
読字能力が大幅に改善された症例 を紹介します(草野ら, 脳と発達, 2015)。
本症例の8歳の女の子は
「文字が動いて見えるため、文章が読めない」
「枠の中に字が書けない」
と学習の困難を抱えていて、
特に明るくてコントラストの強い場面でその傾向が顕著だったといいます。
これは、“アーレン症候群”の概念に合致します。
アーレンシンドロームまたはアーレン症候群とは、イギリスの教育心理学者の Helen Irlen博士が見つけた視知覚障害の一つです。本来は『光の感受性障害(SSS:Scotopic Sensitivity Syndrome)』と言われる新造語で、のちにアーレン症候群と呼ばれるようになりました。SSSのある人はある特定の波長の光に対しての過敏性があり、コントラストの強い場合に最も顕著に反応します。特に光が眩しく感じ、蛍光灯などの下で読む時に、めまいを感じたり、不安感や心拍数の増加などを認める場合があります。しかし、生まれつき感覚が人一倍敏感な人がいるため、同じような症状でも注意が必要です。
Irlen Syndrome Sample Print Distortions
図はSTRAWという一般的に読字障害のスクリーニングに用いられている検査の結果を示しています。
遮光レンズ眼鏡を装用した場合(左)と装用していない場合(右)で比べると、
読めなかった文字が読めるようになっていることが分かります。
このような光の過感受性のために、読字や集中困難が起きている子はいるはずです。
カラーレンズ等によって勉強がラクになる人は一定数いるのではないかと推察されます。
これは症例という事例証拠に過ぎないので科学的裏付けには乏しいです。
Irlen氏は、ADHDやLDの46%が症状の緩和にカラーレンズが役立つと報告しています。
「カラーレンズ」という非常に簡単な手段ですから試してみる価値はありますよね。
特に学習障害に携わる医療関係者や支援者は記憶しておくべきかと思います。
続き
⇢ 視覚過敏について調べてみた(後編)
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