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発達障害専門のグループプログラム(ASD)について

こんにちは。スタッフの田汲です。

師走を迎え、冷え込みが厳しくなってきました。

今年はコロナのために、忘年会や帰省の在り方も例年と変わってきそうですね。

私は夏に祖母らとリモートお墓参りをしたので、冬もできたらいいなと考えていますが、皆さんはどんな冬を過ごされるでしょうか。

 

今日は、成人期ASDの方を対象としたプログラムについて、私自身が以前の職場でスタッフとして参加した経験を交えて紹介したいと思います。

私の経験をもとにお話するため、

・あくまでスタッフとして参加した“個人の所感”であること

・そのため、プログラムの進行や雰囲気は病院やその時々により異なること

の2点に留意した上で読み進めていただけると助かります。

 

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発達障害専門プログラムって?

今回取り上げるのは、厚生労働省の定める“発達障害専門プログラム”です。

このプログラムは、研究により介入と効果検証を繰り返して作成され、コミュニケーション量や生活の質の改善が認められたものです。

厚生労働省が定める診療報酬における「精神科ショート・ケア」における一文でも、以下のようにこのプログラムが推奨されています。

 

「なお、自閉症スペクトラム及びその近縁の発達障害の患者に対する精神科ショート・ケアの実施に当たっては、「発達障害専門プログラム」(日本医療研究開 発機構「発達障害者の特性をふまえた精神科ショートケア・プログラムの開発と臨床応用に関する研究」において作成)を参考に行うことが望ましい。」

 

また、均一なプログラムの提供を目指すため、現在は専門職向けにマニュアルが刊行されています。

 

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プログラムの目的としては、

①お互いの思いや悩みを共有する

②新しいスキルを習得する

③自己理解を深める

④より自分自身に合った「処世術(対処スキル)」を身につける

⑤同質な集団で新たな体験をする

という5つが挙げられており、この目的に沿った全20回のグループプログラムが実施されます。

 

グループ構成は、8〜10名の参加者に対し、2名以上の異なる職種のスタッフ配置が望ましいとされています。

ASD特性や知的な能力、社会適応度や社会経験、性別や年齢等に配慮したグルーピングがよいとされていますが、参加者が少ない場合など、施設や状況によっては配慮に限界があることも考えられます。

私がいた職場では、1期ごとに2〜3つのグループがあることも珍しくなく、一つのグループには看護師、精神保健福祉士、臨床心理士を中心に、医師が参加することもありました。

多職種が参加することによって、それぞれの専門的な視点から介入することが可能になります。

期によっては、1グループの参加人数が10人を超えることもあり、ASDプログラムの需要の高さがうかがえます。

 

プログラム参加の流れと費用は?

私が参加したプログラムは、精神科病院内のデイケアにて実施されていました。

そのため、主治医の指示→プログラムへの参加という流れになります。

施設やスタッフ数などの資源は限られており、1期20回という長さもあるため、グループへの参加まで数ヶ月お待ちいただくこともありました。

 

参加費用は、ASDプログラム単体で行う場合、厚生労働省が定めるところの精神科ショートケアとして診療報酬(小規模:275点、大規模:330点)が算定され、平成30年度の診療報酬改訂後は、発達障害専門プログラムの加算(200点)が認められるようになりました。

このように病院内で行う場合、医療保険制度に基づいた自己負担額を支払い、参加することになります。

 

プログラムの内容は?

プログラムは先に述べたように全20回です。

比較的しっかりと構造化されており、回によって講義やワーク、ディスカッションが織り交ぜられています。

1回のプログラム内容があらかじめ分かるようにもなっているため、内容の見通しがつきやすいことも、人によっては安心材料になると思います。

 

内容としては、ASDについて学ぶための心理教育から始まり、コミュニケーションについて考える回や社会資源の利用の仕方を学ぶ回、感情コントロールについて考える回など、多岐に渡ります。

コミュニケーションは、挨拶からアサーティブ(相手も自分も大事にするコミュニケーション)な対応まで、スモールステップで取り組めるようになっています。

参加メンバーの悩みについて、各参加者が自分なりの対処法を提供し合う、いわゆるピア・サポートの回もあります。

参加してみると、どの回でも、実際の行動や言葉選びひとつについても、具体的かつ丁寧に検討しながら話し合っていたことが印象的でした。

また、プログラムの進め方として、絵や図を用いる・発言を毎回ホワイトボードにまとめるなど、ASDの方が扱いやすいとされている視覚情報をふんだんに使うことも特徴的かもしれません。

 

プログラムの最後の方では、「自分の特性についてのトリセツを作る」「参加メンバーをほめてみる」といった、抽象的で難しい作業を行うこともあります。

回が進むにつれて、自己理解や他者との関わりが広がり、このような作業にも取り組めるようになっていく姿には、いつも私が勇気をもらっていたことが思い返されます。 

 

 “グループであること”の意味は?

では、これらのプログラムがグループであることの意義とは一体なんでしょうか。

それは、プログラムの目的として挙げられていたような、“お互いの思いや悩みを共有する”こと、“同質な集団で新たな体験をする”ことにあると考えられます。

同じ診断名を持つ者同士のグループだからこそ、「この悩みは自分だけではないんだ」と思えて安心できたり、「こんな風にすればいいのか」と参考になる意見をもらえたりすることがあります。

私が参加したグループでは、社会人の方同士で仕事の進め方や上司とのコミュニケーションの難しさをアドバイスし合ったり、「あるある」と笑い合ったりする光景がよく見られていました。

 

また、同質の集団内であっても、感じ方や考え方は人それぞれです。

日常の社会生活で考え方の食い違いが起こったり、そのような場面でうまく対応できないと、それは傷つき体験にもなりえます。

しかし、構造化されたプログラムの中であれば、心理的にも安全な形で、自分と違う感じ方・考え方にふれる経験をすることができます。

他者の感じ方考え方を知ることで「自分もそうかも」「いや違うかも」と考えることに繋がり、結果的には自己理解も深まっていきます。

グループであることによって、同じものへの興味や関心を共有する経験、他者の視点を知ることや受け入れる経験そのものが、特にASDの方にとっては大事な経験となりうるのではないでしょうか。

 

最後に

今回は、ASDの方を対象としたグループについて、私の経験を少し混ぜつつご紹介しました。

プログラムの内容として得るものと、グループであることによって起こる体験から得られるものと、どちらもあることが少しでも伝わっていれば幸いです。

機会がありましたら、ADHD専門プログラムに参加した経験についてもお話できればと思っています。

 

ライデックでも、今はコロナ禍のため休止中ですが、グループプログラムを実施しています。

グループが再開した暁には、ご興味があればぜひグループプログラムを体験しに来てみてくださいね。

 

 

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 発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)

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