こんにちは。スタッフの田汲です。
再びの緊急事態宣言下、皆さんはどうお過ごしでしょうか。
個人的には、運動不足や水分の摂り忘れに気をつけなければと感じています。
家の中でも心身ともに健康でいられるよう、心がけていきたいですね。
今回は、マインドフルネスというものについてご紹介したいと思います。
マインドフルネスとは?
マインドフルネス(Mindfulness)とは、Jon Kabat-Zinn(2003)によって「今ここでの経験に、評価や判断を加えることなく能動的な注意を向けること」と定義されています。
Jon Kabat-Zinnが禅の思想に影響を受けて医療に取り入れ、瞑想とヨガをベースに治療法として創始したのが、マインドフルネスという治療技法です。
彼はのちに、マサチューセッツ州立大学にCenter For Mindfulnessを設立し、マインドフルネスストレス低減法というプログラムを構築しました。
今日におけるマインドフルネスは、認知行動療法、特に“第3世代の認知行動療法”の代表的な技法のひとつでもあります。
第3世代の認知行動療法では、行動療法(第1世代)に認知という変数を加えた認知行動療法(第2世代)に対し、認知の内容よりも機能面に着目しています。
その中でも、マインドフルネスは、思考や感情が及ぼす影響(=機能)を変えるために、身体感覚や思考や感情に気づきを向け、それらをあるがままに受け入れるトレーニングを行います。
身体感覚や思考、感情といった、自分が今感じていることを観察できるようになる、いわゆるメタ認知を鍛えるということです。
あるがまま受け入れることが習熟されると、ネガティブな思考や感情に執着することなく、距離を置けるようになるとされています。
…ちょっと抽象的ですよね。後半ではマインドフルネスを用いた初歩的なエクササイズを紹介しますので、ぜひ体験してみてください。
ちなみに、第3世代の認知行動療法には、ACT(Acceptance & Commitment Therapy)やメタ認知療法、弁証法的行動療法など、多様な治療法があります。
これらについてはまたどこかでご紹介できればと思います。
マインドフルネスの対象は?
マインドフルネスは、先に述べたような機能的側面があることから、さまざまな疾患や現症に対して使用されています。
例えば、Jon Kabat-Zinn(1990)が考案したマインドフルネスストレス低減法(Mindfulness Based Stress Reduction : MBSR)は、全般的なストレスや慢性疼痛を対象として考案されました。
また、90年代に開発されたマインドフルネス認知療法(Mindfulness Based Cognitive Therapy : MBCT)は、反復性うつ病患者の再発予防を目的としています。
春木豊(2008)らによれば、うつ病、摂食障害、がんなどの疾患や、喫煙などの生活習慣においても用いられているようです。
マインドフルネスのエビデンス(=科学的根拠)についても、近年種々の論文で取り上げられています。
特に、Madhav Goyal(2014)らによる、3515人の実験協力者を内包した47の実験結果を含む研究を統合・解析した論文では、不安と抑うつと疼痛に対し、おおむね中程度の改善が認められることが示されました。
ポジティブな気分、注意力、物質使用、食習慣、睡眠、体重に及ぼす影響については、エビデンスが十分ではないとのことでした。
一方で、ストレスおよびメンタルヘルスに関する生活の質の改善については、エビデンスが低かったことも明らかになっています。
詳細は以下のリンクまで。
実施する側の文化的背景を問わず利用できること、トレーニングを重ねれば場所を選ばず、金銭的なコストをかけずにできるセルフケアであることから、マインドフルネスは汎用性の高い治療法だと考えられます。
適用されている疾患や現症の範囲が広い現状を考えても、今後は対象ごとの精緻な効果測定研究が増えていくことが望まれます。
マインドフルネスを試してみよう
マインドフルネスは、基本的に、繰り返しトレーニングしながら身につけていくものです。
最初は変な感覚を抱いたり、これ合ってるのかな?と思ったりするかもしれません。
しかし、自分の体験をすべてあるがままに受け入れるなんて、そう自然にできるものではないということを知っておいてください(私はマインドフルネスをやる前の説明で「新しい筋肉をつけるようなもの」と表現することが多いです)。
まずは1日5分から、繰り返し試し続けることが大事とされています。
では、ひとつ、初歩的なエクササイズをご紹介します。
<呼吸のエクササイズ>
今から、下の文章に従い、呼吸に注意を向けてみてください。
このエクササイズは、自分の体験を観察するための観察者になる練習をすることが目的です。
自分の感覚がどう生じているのか、観察することに慣れていくための第一歩になります。
呼吸という基本的な動作を使うことで、いつでもどんな場所でもできる・お手軽な動作をきっかけにして自分を観察するモードに入っていける、などの利点があります。
このエクササイズは導入部分なので、このあとに思考や感情にも徐々に目を向ける練習に入っていく、という流れになっています。
おわりに
マインドフルネスは今、いろいろな場所で取り入れられています。
私自身もセルフケアとして習得しながら、少しずつプログラムにも取り入れ始めているところです。
個人的には、セラピストの側として、認知行動療法について造詣の深い伊藤先生と藤澤先生の対談の中で伊藤先生がおっしゃっていた「さまざまな心理療法による変容の過程でも、マインドフルな状態を経ている」という言葉が印象的でした。
僭越ながら、対談記事のリンクを貼らせていただきますね。
相談者の方が、主体として自分の今の状態をありのまま感じ取ること、そしてその状態に対して気づきを得ることは、確かに大事だという所感があります。
次回、学術広報のサハラが担当する記事でも、マインドフルネスの効果などについて扱う予定です。
ぜひ、そちらもあわせてご覧くださいね。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
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