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教育制度について(日本・アメリカ編)

代表です。今回は2回に渡り、スタッフの瀬戸、加藤と一緒に日本を含めたいくつかの国の教障害を持った子に対する教育制度についてお届けします。

 

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近年、日本においても発達障害を持つ子どもたちは学校教育において少しずつサポートを受けることができるようになってきました。
今回は日本とアメリカの学校教育ではどのように就学先を決めるのか、どういった制度があるのかというご紹介をします。

日本の教育制度

 

日本には、一般的な学級、複式学級、特別支援学級、そして特別支援学校というものが存在します。複式学級というのは小規模学校において2つの学年をまとめた学級のことです。まずは、学校によって、どういった違いや特色があるのかを調べてみました。

 

義務標準法に規定する学級編成の標準数

 

小学校

中学校

同学年で編制する学級

1年時:35名
2年時以降:40名

40名

複式学級(2学年)

1年生含む場合:8名
それ以外:16名

8名

特別支援学級

8名

8名

特別支援学校

6名 (重複障害:3名)

やはり、通常学級と比較すると、他の学級は少人数となっています。
では、各学校の種類と対象者はどのように異なるのでしょうか?

 

①特別支援学校
障害のある幼児児童生徒に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること目的とする学校。
【対象障害種】視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)

②特別支援学級
小学校、中学校等において以下に示す障害のある児童生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するために設置される学級。
【対象障害種】知的障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障害者、自閉症・情緒障害者

③通級による指導
小学校、中学校、高等学校等において、通常の学級に在籍し、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする児童生徒に対して、障害に応じた特別の指導を行う指導形態。
【対象障害種】言語障害者、自閉症者、情緒障害、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者

 

④ 通常の学級
小学校、中学校、高等学校等にも障害のある児童生徒が在籍しており、個々の障害に配慮しつつ通常の教育課程に基づく指導を行っています。なお、小学校、中学校における、学習障害、注意欠陥多動性障害、高度自閉症等の発達障害の可能性がある児童生徒は6.5%程度の在籍率となっている。
(平成24年に文部科学省が行った調査において、学級担任を含む複数の教員により判断された回答に基づくものであり、医師の判断によるものではない点に留意が必要。)

発達障害に限ってみてみると、以下のように区分されるようです。

特別支援学校・特別支援学級・通級による指導の対象となる障害の種類及び程度

特別支援学校

特別支援学級

通級による指導

知的障害者:

一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で、日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの

二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの

知的障害者:

知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で、社会生活への適応が困難である程度のもの

 

 

自閉症者・情緒障害者:

一 自閉症又はそれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの

二 主として心理的要因による選択制緘黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの

自閉症者:自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの

 

情緒障害者:主として心理的な要因による選択制緘黙等があるもので、通常の学級で学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの

 

 

学習障害者:全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・各・計算する又は推論する能力の内特定の物の習得と使用に著しい困難を示すもので、一部特別な指導を必要する程度のもの

 

注意欠陥多動障害者:年齢又は発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性・多動性が認められ、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、一部特別な指導を必要とする程度

 

4つある学びの場のどれに通うのか、就学先の決定のプロセスについては文部科学省は以下のように定めています。

「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとすることが適当である。その際、市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である。」

判定基準は明確には定めておらず、保護者・専門家からの意見聴取を得て、各自治体の教育委員会が「総合的に判断」をして、就学先を決めることが多いようです。
特別支援学校・特別支援学級・通級と、それぞれ対象となる程度は定められてはいるものの、医師の診断の有無などは明確には必須とされておらず、実際に自治体によっては、就学先を決めるために診断が必ず必須である場合や、IQの値によって判断されてしまうという場合もあるようです。

明確な判定基準がない分、ある程度本人や保護者の意見が尊重されやすい制度ではありますが、一方で自治体によって指導対象となる児童の解釈は様々であり、就学先を決定する「総合的な判断」が場所によって大きく左右されるのが現状と考えられます。

アメリカ:IDEA(The Individuals with Disabilities Education Act)

日本以外の国では発達障害のある方に対して、学校内でどのようなプロセスで通学先がきまり、どのようなサポートを受けることができるのでしょうか?今回はアメリカのIDEA(The Individuals with Disabilities Education Act)についてご紹介します。

IDEAとは

IDEAは1975年に、障害を持つ子どもたちに対する適切な教育を無料で提供することを目的として制定されました。子どもの障害の有無を無料で評価し、障害があることが認められた場合特別な教育や関連するサービスを学校は提供しなければなりません。IDEAのゴールは、すべての子どもたちが学校教育の中で伸びていくことです。

対象者

子どもが生まれてから、高校の卒業または21歳(いずれか早く迎えた方)までの、以下に該当する方を対象としています。


① 特定学習障害(SLD)
読み書き・聞き取り・発語・推論や算数などの能力に影響を与える学習障害のことを言います。(ディスレクシア、書字障害、算数・数字障害、聴覚処理障害、非言語性学習障害など)SLDはIDEAで最も一般的なカテゴリーです。2018年にIDEAを利用した子どもたちの34%がSLDに該当していました。

② その他の健康障害
主に、注意力や実行機能に影響を与えるADHDなどがこのカテゴリーに含まれます。

③ 自閉症スペクトラム障害(ASD)

④ 情緒障害
不安障害、統合失調症、双極性障害、強迫性障害、うつ病などが含まれます。

⑤ 音声または言語障害
このカテゴリーの一般的な例としては吃音があります。

⑥ 視覚障害(盲目を含む)
視力に問題がある子ども、部分的な視力低下と失明の両方がこのカテゴリーには含まれます。眼鏡で視覚障害を矯正できる場合は、このカテゴリーの対象外となります。

⑦ 聴覚障害(Deafness)
補聴器を使用しても、ほとんどまたはすべての音聞き取ることができない場合、こちらのカテゴリーに該当します。

⑧ 難聴(Hearing Impairment)
聴覚障害に該当しない、聴覚の低下(難聴)のことを指します。

⑨ 視覚・聴覚障害
聴覚と視覚の両方に障害があると診断された場合、こちらのカテゴリーに該当します。

⑩ 整形外科的障害
身体の機能や能力に障害がある、例えば脳性麻痺などがこちらに該当します。

⑪ 知的障害
知的能力が平均以下であること、またコミュニケーションやセルフケア、社会的ケアが低い場合もあります。ダウン症は、知的障害の一例として含まれます。

⑫ 外傷性脳損傷
事故や何らかの物理的な力によって引き起こされる脳損傷がある方が含まれます。複数の障害を持つ子どもは、IDEAの対象となる条件を1つ以上持っている場合、該当します。

 

保護者の介入

学校が提供するサービスについて不満がある場合は、学校と協力し合いながら交渉することができます。また、学校側に問題解決を求めることも可能です。
保護者は子どもが受ける教育について意見ができるように、法律によって特定の権利と保護が与えられています。(例えば、学校は子どもに対して何かサービスを提供する前に必ず保護者の承諾を得なければいけないと決まっています。)

 

IDEAで出来ることと、IDEAに含まれないことは明確に決まっています。

 

IDEAでできること

  • 個人に合わせた特別教育を提供(個別支援)
  • 特別教育を受けることで子どもたちが利益を得られるよう関連するサービスの提供
  • 完全に無料でこれらのサービスを提供すること
  • 一般授業を受ける際に必要な設備や環境設定を提供すること(例:オーディオブック、テストでの時間延長や座席の指定等)
  • 個別支援計画(Individualized Education Program:IEP)の作成すること。法律によって、IEPにはサービス、進行状況、年単位での目標などが含まれる。
  • 子どもに対してより制限のない環境(Least Restrictive Environment: LRE)で教育をおこなうこと。可能な限り、生涯を持たない子どもと一緒に教育を受けること。別のクラスに移ることは、子どもが必要としない限りは行わないこと。

 

IDEAには含まれていないこと

  • 子どもの最大限の力を引き出すために最高のサービスを提供すること。(子どもが成長していくために「適切」なサービスは提供される)
  • 子どもに対してあなたが求める特別なプログラムや環境設定を行うこと。(保護者は、IEPのメンバーではあるが、FAPEは特定のプログラムを子供に行うことは補償しない。IEPのチームが最終的な判断を行う)
  • 行事などにおいて、子どもに対して特別な役割を保障すること。(FAPEはクラブやスポーツなどで子どもに対して特別な待遇をすることはない。しかし、他の子どもたちと同様の参加機会は与えられるべきである)

 

州による違い

IDEAはアメリカ全土に普及していますが、各州によって法律の解釈が変わる余地があります。州の法律は、国の法律と矛盾してはならず、国の要求を下回るサービスの提供をしてはなりません。しかし、国の要求以上に子どもと保護者に対する保護を行うことは出来ます。そのため、州(場合によっては学区)によって、「特定の学習障害」の判断基準が異なったり、使用する教育プログラムは異なったりする場合があります。

IDEAは発達に遅れのある子どもや特定の健康状態にある子どもへ早期介入を規定しています。しかし、「遅れ」の定義や誰がサービスを受ける資格があるのか、誰がどのようにサービスにお金を払うのかの規定はされていないため、その判断は各州によって様々となります。州によっては、寛大なところもあり、理学療法や家族へのトレーニングの費用も州が負担してくれる場合もありますが、一部の費用を保護者が自己負担しなければならない州も存在します。

 

私立の場合

日本と同様、公立ではなく私立の学校となると、その学校によって特別な支援が必要な子どもに提供できることが大きく異なってきます。

「Independent School For Students With Learning Disabilities」は、発達障害を持っている子どもを対象としている学校で、日本でいう特別支援学校です。アメリカの多くの特別支援学校はADHDに特化して支援しています。私立のため学費は個人で負担しなければなりませんが、公的資金の援助(funding)を受けることもできます。Independent School For Students With Learning Disabilities以外の私立学校からは、発達障害に関連する特別なサポートを受けることはあまり期待ができないようで、私立の学校によっては、特定の分野で苦戦している子どもにはそもそも入学を許可しない場合もあるようです。

 

IDEAを使用した学校入学までの過程

 

① 発達障害の有無の判断(Evaluation for Special Education Services)
まず、通いたい、または通う予定の学校に査定依頼の手紙を家族が書きます。その後、学校側は子どもにサポートが必要かどうかの発達検査などを用いて判断します。

 

② サービス
査定によって、特別なサポートを受ける資格があると判断された場合、選択肢がいくつかあります。主な選択肢は2つで、1つは IDEAによってあらゆるサービスが提供される公立学校に行く、2つ目は私立の学校に通い、「平等なサービス(Equitable Service)」を受ける、この2つから家族と本人は選ぶことができます。

 

③ 対象者
IDEAは子どもが生まれてから高校の卒業または21歳まで(いずれか早く迎えた方)までを対象としています。

 

公立学校と私立学校では以下のような違いがあります。

 

公立学校では、IDEAに則り、個別支援計画(Individualized Education Program:IEP)の作成することが義務付けられています。IEPにはサービス、進行状況、年単位での目標などが含まれたものを学校側は保護者や本人と共に作成します。

一方で、私立に通わせることを決めた場合、学校または学区はサービスプラン(IEPではないが、支援計画のようなもの)を作成することができます。しかし、サービスプランはIEPほど明確に含まれる内容が決まっておらず、 IEPよりも内容が充実していないことが多いようです。

また、公立の学校は、特別支援の教師に対して厳しいガイドラインを設けており、特別支援の教育免許はIDEAと各州の教育法によって定められています。私立の特別支援学校の教師は、公立学校と同様に特別支援に関するトレーニングを受けていることが多いですが、すべての私立学校(例えば、士官学校や教区学校)の教師が同様の特別支援に関するトレーニングを受けているとは限りません。

公立学校と同様に私立学校においても、子どもの特性によって、テスト時間の延長や、補助テクノロジーの使用を認めることもあります。また、普段の授業時間に有料で教師から別途特別な授業を受けることも可能です。しかし、子どもがたくさんのサポートを必要としている場合は、学校側が十分な支援を受けることができる公立学校へ行くことを進めることがあるようです。

以上のように公立学校と私立学校の違いを比較しながら保護者と本人はどちらの学校に進学するかの方向性を決めます。

 

③ 配置の決定
子どもが特別な支援を受ける資格があると判断された場合、まず学区はどこの学校の教育環境とサービスが適切かを決定します。保護者はこの決定を決めるチームの一員に含まれるため、保護者も意見をいうことができますが、地域の公立学校が適切であると判断されることが多いようです。

しかし居住地区が、一定の範囲の障害を持つ子どもを教育するために州が承認した学校に子どもを送る費用を負担することに同意した場合は、学区が学区外の配置に同意する場合もあります。これは、地元の公立学校では子供のニーズが満たせないと地区が判断した場合に起こり得るようです。

以上のように、アメリカのIDEAでは学校で提供できること・できないことが明確に法律に記載されています。州や学区などの自治体によって、少しずつIDEAを受けられる対象の判断基準、解釈やサポート内容は違うものの、プロセスや最低限提供されるサービスは日本以上にはっきりと、そして細かく明示されている印象を受けました。IDEAで決められたIEP(個別支援計画)に保護者が納得いかない場合は、学校との交渉やヒアリングを第3者を介して行うことができ、場合によっては学校や州を相手にIDEA違反として、訴訟などの裁判に発展させることもできるようです。アメリカは訴訟文化が根付いているからこそ、法律での明示が必要になってくるのかもしれません。

日本の場合、公立学校での支援級の利用には専門家の所見や診断書は必ずしも必要ではなく、教育委員会が話し合いの上で決定します。本人や保護者の意見が可能な限り尊重され、専門家の意見を含め、総合的に判断されることが多いようですが、その判断基準も明確ではなく、どこの学校にどのような形で通えるかの判定基準はアメリカ以上に自治体によって様々であることが現状です。日本も公立学校・私立学校でどこまで支援が提供できるか、また支援を受けるまでのプロセスを国が明示することで、各学校の負担が減り、また保護者が学校を選択する上での判断材料として役に立つのではないかなと感じました。

今回はアメリカでの様子を紹介しましたが、次回以降も様々な国での発達障害を持つ子どもたちにどのような教育が行われているかをご紹介いたします。

 

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 発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)

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