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発達障害の二次障害?併存症??ご存じですか?

皆さん、こんにちは

スタッフの村田です。

 

発達障害の二次障害って言葉を聞いたことはあるでしょうか?聞いたことのある方が多いと思います。聞いたことが無い人でも、なんとなく、発達障害の為に起こる障害なのだろうなと思う人は多いのではないでしょうか?
では、発達障害の「併存症」という言葉を聞いたことがある人はいるでしょうか?こちらは、初めて聞いたと言う方が多いのではないでしょうか?ただ、”併存”との言葉の意味から、発達障害と一緒に起こっている疾患なのでは?と予想する人も多いと思います。
さて、二次障害と併存疾患のどちらも、発達障害と同時に起こっている支障のようで、同じことを言っているかのように聞こえもしますが、違いはあるのでしょうか?
例えば、次のうち、どちらが発達障害の二次障害と思いますか?
A:”うつ病”
B:”引きこもり”

今日は、発達障害の二次障害についてお話したいと思います。
答えは後ほど!

 

二次障害とは

二次障害とは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の報告によれば、
「二次障害」は、以下のような特徴があるとされています。

  • 発達障害児・者に起きる心理的な反応である。発達障害があることで、家庭や学校などの子供を取り巻く周囲から不適切な対応受けることに起因する心理的な反応で、子供の生活機能に悪影響を与える望ましくない状態。
  • 適切な指導・支援を受けられないことによって発達障害のある子供の内面に起きる様々な心理的な葛藤が含まれる。
  • 発達障害の存在が二次障害が起きる発端の原因であり、二次障害と発達障害の間には因果関係がある。

つまり、発達障害が原因となり起こる、その人にとって不利益を感じる経験ではりますが、いわゆる医療等で使われる診断名はつかないものを指します。

www.nise.go.jp

 

併存症とは
一方で、依存症は以下のような特徴があるとされています。

  • 発達障害に併存する、医学的に診断が可能な状態である。
  • 発達障害の存在と併存症には、因果関係がある場合(その多くは心理・環境的要因に曝されたことによるもので併存症A)と、因果関係がない場合(その多くは生物学的な要因によるもので併存症B)とがある。

つまり、発達障害の特性とは必ずしも関係の無い場合もある精神疾患や身体疾患であり、医学的診断がつくものを指します。
特に、発達障害特性と因果関係の無い併存症Bについては、遺伝的要因が強いと考えられています。今回は二次障害とそれに引き続く併存症(併存症A)についてお話をしたいので、併存症Bについては一先ず詳しく触れずお話を進めたいと思います。

 

二次障害の例
そのため、それぞれの例を挙げると・・・
発達障害によって引き起こされる引きこもりや、暴力などは二次障害となります。
一方で、二次障害としての引きこもり等のために、気分の落ち込みが現れ、さらに症状が重くなり、うつ病や不安症となってしまう場合は併存症となります。
ですので、冒頭の質問の正解は、Bの引きこもりになります。

 

二次障害は起こりやすい?
さて、それでは二次障害は起こりやすいものでしょうか?
この疑問について考えてみると、例えば、不登校に関しては、不登校に陥っている人の15-52%が発達障害であるとの報告が、いじめ被害については、発達障害の方は、発達障害ではない人に比べ2-4倍いじめの被害にあっているとの報告があります。
併存症に関しては、発達障害の方の約二人に一人がうつ病にかかるとの報告や、ADHDの方の15-35%が不安症にかかるとの報告があります。
また、発達障害の二次障害や併存症は、6-8歳でおよそ20%、12-15歳でおよそ61%の方に現れるとされていて、増加することが示されています。
これらの情報を踏まえると、二次障害は起こりやすいと言えるでしょう。

 

二次障害や併存症が起きやすい理由
これに関しては、二次障害の例にてお話したことと重なるのですが、気持ちのコントロールが難しかったり、強いこだわりがあったりといったような発達障害特性と、それによる行動や考え、気持ちの変化が関係しているようです。
例えば、発達特性の為に思うようにコミュニケーションを取ることが出来ず、傷つく経験を繰り返し体験すると、自分が悪いと自己評価が低下することが予想されます。また、そのためにいじめ被害を受けた場合、人とのかかわりが怖くなるため、不登校となり、自己嫌悪を繰り返し、うつ病や不安症となってしまうといった可能性が考えられます。
或いは、傷つく体験が繰り返されることで、自分を守るためにも相手に対して攻撃的に振る舞うことが多くなり、その結果、さらに対人関係が悪化するために、対人関係で孤立し孤独を感じる機会が多くなる可能性も考えられます。


そのため、先ほどの6-8歳に比べ12-15歳の方が二次障害や併存症を抱えることが多いとの話は、ストレスを抑えられるコミュニケーションの方法を教えてもらうといった支援や特性にあった環境で生活を送るといった支援を受ける経験が少なかったために、傷つくことを多く経験してきたことが一つの理由ではないかと考えられます。
また、発達障害特性に関しては、当ブログで以前お伝えしたRejection Sensitive Dysphoria(拒絶敏感不安症)や、感覚過敏の存在も二次障害になりやすい要因として挙げられます。
この点を踏まえても、二次障害が起こりやすい条件がそろっていると考えられます。
ちなみに、Rejection Sensitive Dysphoriaとは、周囲から批判されているといった感覚になりやすいとの特徴を持つもので、感覚過敏は音や光などの感覚刺激に対する過敏さのことです。
ご興味のある方は当該記事もご覧ください。

www.tsudanuma-ridc.com

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二次障害や併存症の予防
それでは、二次障害や併存症を防ぐためにはどうしたらよいでしょうか?これは、二次障害や併存症が起きやすい理由から考えると、発達特性を含めて自分のことを理解することも大切ですが、無理をしすぎたり、ストレスを感じすぎない環境で生活を送ることも大切です。そのために、自分のことを理解してくれる人に相談をしたり、医療機関等を利用するのも良いと思います。普段、患者さんに関わっている者としての個人的感想ではありますが、併存症となってから関わった場合に比べ、二次障害の内にその方のサポートに関われた方が、より早くその方の支障が軽減していくように感じます。ケガや病気が重症よりも軽症の方が早くよくなるのと同じですね。困った時に周りに助けを求めることは当たり前のことですので、少なくともこのブログを読んでいる方の中で、二次障害や併存症かも?と思い当たるところがあるのに、一人で悩まれている方がいましたら、信用できる方に相談したり、医療機関の利用を考えて貰えればと思います。

それでは、また

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