代表です。
ご存知の方がいるかもしれませんが、(株)ライデックでは就労移行支援事業所やクリニックの依頼を受けて「出張講座」という活動をしています。
10人程度の小規模なグループを対象として、精神科や心理士的な目線から日常生活に役立つスキルを学んでもらおうというもので、現在7テーマほどを順番に月に1回の割合で私やスタッフが赴いて実習形式で行っています。
今回はその中から「要約に挑戦~伝えたい内容を上手にまとめてみよう~」を紹介します。
「要約」の意義
要約、と聞いて何を思い浮かべるでしょうか、
多くの方は学校の国語や英語の課題や試験問題ではないでしょうか、
実は要約というのは実生活で我々が無意識にしている思考と行為であり、コミュニケーションの大きなツールでもあります。
例えば
- 今日あった出来事について人に語る時
- 映画や本のあらすじをまとめる時
- 職場での報連相(報告・連絡・相談)をする時
- お店のサービスカウンターや役所窓口、電話やメールなどで事情を伝える時
といったように、生活上の様々な場面で要約の技術を私たちは無意識に、時に意識しながら使っています。
何かを人に伝えるときの1つのコツは、要点を絞ってコンパクトにまとめることだとはよく言われますよね。起こった出来事の全てを時系列に述べたり、自社製品の特徴や自分の症状の全てを事細かに述べることを限られた時間でしてしまうと、本当に伝えたいことがボケてしまい、話している相手に理解をしてもらうことが難しくなってしまいます。
そこで「要約に挑戦」講座ではその1つとして、自分が把握したことの要点を抽出して簡潔に伝えることを狙いとして、要約技術を磨く訓練をしています。
具体的には文章を提示し、一定の字数で内容を要約してもらいます。そのときに、字数に見合うように内容をコンパクトにまとめることが必要なわけですが、その際に下記を意識してもらいます。
- 内容から外せない要点を抽出
- 言葉を一般化して縮める(チョコやクッキー⇛お菓子、のように)
- 読み手を意識して文章をまとめる(読み手がどの地域の人、どの立場の人か、大人/子供など)
文章例を出してみますね。
文章例1
「日本の春の花代表である桜は、自生している種類だけで15種類位、品種改良された桜は300品種以上もあり、家庭の庭や公共施設の公園、街路にも植えられている樹木です。」(77文字 )
これを30字程度に要約すると、例えばこんな感じです。
要約例①「桜、自生種15種類、品種改良で300以上。庭や公園・街路に植えられる」(34字)
要約例②「桜、自生・改良種合わせて多種。庭園、公園、街路樹で楽しまれる」(30字)
要約例③「日本の桜は自生・品種共に沢山の種類があり、至るところで見られる」(30字)
元の文章は情報量がとても多いですね。この中で書き手が読み手に伝えたいことは、恐らく桜には品種が沢山あり、日本ならどこでも見られることででしょう。種類の数や、場所の具体例は肉付けであると判断するなら、適切な言い換えを行った要約例③がもっとも上手く感じます。
中には、「桜は日本でとても愛されている」とまとめて下さった方もいました。要約例、とするにはやり過ぎではありますが、これは確かに書き手の意図そのものでしょうね。
読み手を意識する場合には例えばこんな文章。
文章例2
「今年の桜開花予想では、開花トップは東京の3月20日、開花時期は西日本や東日本では平年並のところが多く、北日本では平年より早い予想です。」(68文字)
この文章に関しては、読み手が東北の人、九州の人であるならと場合分けして15字程度にまとめてみます。
そうすると、
- 読み手が東北の人なら➠「桜の開花、北日本は平年より早い予想 」
- 読み手が九州の人なら➠「桜の開花、西日本は平年並の予想 」
というのが正解になります。それぞれの地域の人にとって不要な情報を大胆にカットしてみるわけですね。
読み手の欲しい情報を予想しつつ、伝えたい内容を書き分けてみることは、コミュニケーションの良い練習にもなるでしょう。
ChatGPTで練習してみよう
ところでこんな形で講座内では2時間で5~6個の課題をこなしてもらうのですが、最近はChatGPTを開いて回答してもらっています。
実をいうと、このような要約練習を何人もでやると、得意な方、苦手な方に二分されてしまい、得意な方はいいのですが、苦手な方は問題をこなすうちに辛い気持ちになってくるだろうと予想していました。講座自体は、出来不出来を評価するようなことはしないのですが、それでもまるでテストのような雰囲気になってしまうことも危惧されます。
そこで、「ChatGPTに回答してもらいましょう」と伝えると皆さん楽しい気持ちになれるようです。人智を超える(かのように思える)AIの回答なら、AIだしな、と、その上手い回答に素直に納得できるのでしょう。
講座の中では最後のチャレンジ課題として、昔話の「桃太郎」を2000字程度の文で読んでもらい、100字程度に要約してもらいますが、ChatGPTにもやってもらいます。
ChatGPTによる100字程度の回答はこんな感じです。
「おじいさん、おばあさんが川で拾った桃から元気な赤ちゃんが現れ、桃太郎と名付けられる。彼は成長して鬼ヶ島で鬼退治に出かけ、途中イヌ、サル、キジを仲間に加える。そして鬼たちを倒し、宝物を持ち帰り、家族は幸せに暮らす。」(106字)
50字程度にしてもらうと、
「桃から生まれた桃太郎、仲間のイヌ、サル、キジと共に鬼ヶ島で鬼退治。宝物を持ち帰り、皆で幸せに暮らす。」(50字)
上手いですね。
ChatGPTは無茶振りしても答えてくれますので、20字程度にまでコンパクトにしてもらいます。
「桃太郎、鬼退治へ。動物と共闘。宝物で幸せに。」(22字)
素晴らしくないですか?
ChatGPTを使うと、課題文の作成から、回答例まで作成してくれますので、自分で要約を練習したい、スキルを向上させたい、のであれば是非使ってみてください。こんな風にで答えてくれます。ただし、字数は指定しても時にその通りにしてくれませんし、要点違うんじゃないかと思うときもありはします。
発達特性は回答に反映されるのか?
さて、こうした文章要約を課題としてこなしてもらう中で、難しいと感じる人の場合には、回答者の発達特性がある程度は反映されているように感じました。
ある開催回での、要約が苦手な方の特徴を拾ってみると、
- 簡潔にし過ぎてしまい、言葉が足りない。
- 意訳が過ぎて、求められる言葉が入っていない。
- 課題文の意図を読み取れず、要点がずれてしまう。
- 情報量が増えるとまとめるのに時間がかかってしまう。
- 感情的内容が汲み取りづらい。
などが挙げられました。
個人によって苦手な部分は異なるので、ASDなら、とかADHDならとかいう診断による一般化は正直むずかしいです。それでもある程度は発達特性が反映される可能性があるいう観点からは、
・自閉的特性面が強い方は内容抽出の段階で的外れになる(内容の意図が汲み取れない)
・ADHD的特性が強いとどこに力点を置くのか判断できず長くなる
といった傾向があるようには感じます。
特に内容がずれてしまう方の場合、要約技術が、普段のコミュニケーション中での「相手の意図を推測しづらい」ことと繋がっている可能性があるのではないでしょうか。
コミュニケーションに難しさを感じる方、また支援者として相手の認知スタイルを知ってみたいとき、ChatGPTも利用しながら要約技術を練習してみるのは試してみる価値があるように感じます。
要約技術は書店に行くと一定の注目があることがわかります。
個人的にはこの本が練習にはお勧めです。
もちろん、他にも沢山ありますので、興味のあるかたは手にとってみてはいかがかと。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
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