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不安を強くしているのは、出来ないとの思い込みのせいかも?

皆さんこんにちは
ライデックの村田です。

皆さんは
自分が不安や苦手と思っていることに対して、周りから「普通に出来ているよ」とか、「良くできるよね」とか言われて、「そんなことないのだけどなぁ」と思うような機会はないですか?私は、そういう時に、そうなのかなぁと少し思う一方で、本当に?と、周りの人の私への評価を疑ってしまうところがあって、自分の考えを信じた方が良いのか、周りの人の評価を信じた方が良いのか迷うところがあります。皆さんは、どうでしょうか?

今日はそんなお話を、対人関係で上手く振る舞えるかについて、自分がどのように認識しているか(自分の社会的スキルをどのように自己評価しているか)。また、周りの人はその人の社会的スキルをどのように評価しているか(他者評価)。そして、認知の誤りが社会的スキルの自己評価と不安にどのように影響しているかについて検討した研究(家計ら、2008年)をもとにお話をしたいと思います。

www.jstage.jst.go.jp

 

 

研究の紹介

この研究、小学生を対象に、自分の社会的スキルについての評価(自己評価)と、認知(考え)の誤りの程度についての回答を求める一方で、児童の教師に対しても、児童の社会的スキルの程度を評価(他者評価)してもらうという方法で行われました。

ちなみに、認知の誤りとは、例えば、一度の失敗経験を基に、何をしても上手くいかないといったような、生活を送り辛くする考え方のことです。

この論文では「破局的な思考」「過度の一般化」「個人化」「選択的な抽出」を認知の誤りとしています。
それぞれを簡単に説明しますね。

 

「破局的な思考」:比較的小さな問題を過大評価し、それが極端に悪い結果につながる   と予想することです。例えば、相手からメッセージの返信がないと「相手は私の事を好きでないのだろう」といった考えになります。
「個人化」:本来自分に関係のない出来事まで自分のせいと考えたり、原因を必要以上に自分に関連づけて、自分を責めてしまうことです。例えば、友人が落ち込んでいる時に、「きっと私が何か悪いことをしたからだ」といった考えになります。
「選択的な抽出」:良いこともたくさん起こっているのに、ささいなネガティブなことに注意を向けることです。例えば、人から多くのポジティブな評価と一緒に少数の改善点が指摘された場合、その改善点だけに焦点を当て、「私はダメな人間だ」と思い込むといった考えになります。
「過度の一般化」:失敗やネガティブな経験を一般的な規則として捉え結論を導くことです。例えば、一度の面接で不採用になった後、「私はどんな仕事にも受からない」といった考えになります。

 

つまり、総じて極端に悲観的な考え方と言えます。このブログでは分かり易くするために、“認知の誤り”を“極端に悲観的な考え方”と言い換えます。
どうでしょう?多かれ少なかれ当てはまるなと思う方もいるかもしれないですね。

さて、話を戻しますと、先ほどもお話したのですが、私も自己評価と他者評価のズレを感じることはそこそこあったりするのですが、どのくらいズレているのかは、なかなか分からないなーと思ったり、どのくらいズレているかが分かったら良いのになと思ったりするので、自己評価と他者評価がどのくらいズレているのかを調べている点は面白いところです。

研究の結果

まずは引っ込み思案からみていくと、極端に悲観的な考え方をする人は、自己評価と他者評価にズレが起きやすいそうで、周囲が思っている以上に自分は引っ込み事案だと思い、そのような行動をしていると自分のことを捉えるそうです。
逆に言うと、周りからみれば、そんな引っ込み思案じゃないよ?と思われているってことですね。

次に、社会的スキルについてみると、こちらも、極端に悲観的な考え方をする人は、自己評価と他者評価にズレが起きやすいそうで、周囲が思っている以上に、自分は社会的に望ましいとされる行動をしていると捉えるそうです。
逆に言うと、周りからみれば、そこまで、社会的に望ましいとされる行動をしすぎているわけではないよ?と思われているってことですね。

確かに、対人関係について極端に悲観的な考え方をする人は、人と関わりたくない行動を取るが故に、自分のことを引っ込み思案だと思い込む可能性が高そうです。
また、そのような人が人と関わる際には、自分らしい行動よりも、社会的に望ましいとされる行動、言ってみれば、否定されたり責められることのない行動を心がけるようになるので、自分は社会的に望ましいとされてる行動をしていると強く考えるのはよく分かる話だなと思います。

また、この研究では、極端に悲観的な考え方をする人に対して、社会的スキルを伝えることは逆効果で、不安を高めてしまう可能性があり、極端に悲観的な考え方について話し合う方が望ましいことを示しています。そういう方(この論文では児童)には、より高いスキルを教えることが必要なのではなく、認知的部分に着目する必要があるということです。
確かに、極端に悲観的な考え方をする人に対して、社会的スキルを伝えた場合、その人からしたら、「自分の行動っておかしいのか。もっとちゃんとしないと!」と考えてしまうかもしれませんね。
なので、自分のことを適切に捉えられているか?過度に出来ていないと考えていないか?について検討してみるという認知的側面の状況を把握することが重要ということです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
冒頭でもお伝えしたように、自分のことを振り返ってみると、自信がなくて不安や苦手に思うようなことについて、「普通に出来ているけど?」と周りから言われることってあるなーと思います。また、不安に思うから普段は準備するのに、準備する余裕がない時にも同じようなコメントをされることも多くて、驚いたりすることもしばしばありますね。個人的には、一人の人から大丈夫と言われても、そうなのかなぁ?といまいち信じられなかったりするのですが、二人以上から言われると確かに考え過ぎていたのかなと思ったりします。

今回の論文を通して、私自身は、不安や苦手に感じる時って、自分のスキルや言動を過度に出来ていないと捉えているのかもしれないなぁと改めて感じました。なので、まずは自分についての客観的な情報を集めようかなと思ったり、自信の無いことについては、周りの評価を信じることから始めてみようかなと改めて思いました。


皆さんはいかがでしょうか?
それではまた

 

 

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