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「仕返す怒り」と「見返す怒り」:その違い、ご存じですか?

皆さんこんにちは。

スタッフの村田です。

 

さて、皆さんは怒りを感じたり、怒ったりした時に、「ムカつく!今に見てろよ!!」と思うような時と、「ムカつく!やり返さないと気が済まない!!」と思う時がありませんか?この二つは同じ「怒り」と呼ばれるものですけど、なんとなくニュアンスが違うと思いませんか?今回はそんな怒りについてのお話です。

 

 

怒りは二種類ある?

先ほどの「ムカつく!今に見てろよ!!」と「ムカつく!やり返さないと気が済まない!!」のお話ですが、前者には、相手を見返してやる!との気持ちが入っている一方で、後者には相手に仕返ししてやる!との気持ちが入っています。では、この二つの違いとは?と言うと、見返しは「傷つけられた時に、相手を見返そうと考えて、努力行動をとる」ことで、仕返しとは「傷つけられた時に、相手に対して何らかの直接的な報復をする」こととされています。つまり、見返しも仕返しも“傷つけられた時”に生じることですが、その内容は大分異なります。

なるほど、怒っているので分かり辛いですけど、改めて考えてみると、傷つけられたり、痛いところを突かれたり、自分が当たり前と思っていることをしてくれなかったり、否定されたりした時に、怒りを感じるなぁと思います。

 

見返しと仕返しは何が違うの?

それでは見返しと仕返しは何が違うのでしょうか?

まず、見返しについて見ていきましょう。見返しは見返し行動を行うことで、怒りの感情が収まっていくことが示されています。また、自尊心が怒りを感じる前よりも向上することも示されています。

一方で、仕返しはと言うと、仕返し行動をすることで、こちらも怒りの感情は収まることが示されています。ただし、その程度は見返しよりも少ないことが示されています。また、自尊心については、怒りを感じる前よりも低下することが示されています。つまり、同じ怒りを感じた時にする行動であっても、見返しは健康的であるのに対し、仕返しは健康的とは言えないようです。

 

仕返しと見返しの違いはどうして生まれるの?

それではなぜこのような違いが出てくるのでしょうか?この違いは見返しと仕返しのプロセスの違いと言われています。

まず見返しから見ていきましょう。見返しは傷ついた時に、「相手への怒りや悔しさ」「納得いかない」「そんなことはない」と思うと同時に、「認められたい」とも思うようです。そして、自分を抑えつつ、「挽回のチャンス」と捉え、「努力」をするといった、自分の成長に繋がる行動をしていくとされています。その結果、「満足感」が得られたり、更なる成長が得られると考えられています。また、これらは社会的に望ましく、適応的な行動になるので、周囲から良い評価を得られる可能性が高くなるとも言われています。

一方で、仕返しは傷ついた時に、「相手への怒りや悔しさ」「嫌な思いをさせられた」「同じ思いをさせたい」との思いのために、衝動的に仕返しをしてしまうようです。その結果、「相手を抑止」することになるため「満足感」を得られるようですが、同時に「罪悪感」を抱いたり、「人間関係の悪化」や「思わぬデメリット」を招いたり、「身にならない」との思いを抱くことにも繋がるそうです。また、これらを繰り返してしまうとも言われています。

整理すると、見返しは、怒りを感じた時に、その原因を検討して、どうしたら良いのかを考え努力していくために、自己成長に繋がることに加え、周囲から認められる可能性が高くなると言えます。

他方、仕返しは、怒りを感じた時に、その怒りを相手に対して直接ぶつけるために、怒りが収まるものの、対人関係の悪化を招くことになったり、罪悪感を抱くことになったり、結局のところ得られるものがないとの思いを抱えることになるものと考えられます。

 

怒りの持続時間と怒りを収めるポイント

ところで、怒りはどのくらい持続するのかと言うと、1週間から2週間が一般的なようです。ただし、3ヶ月以上持続することもあるようです。なぜ、こんなにも持続するのかと言うと、怒りを感じた出来事を自分の中で整理して、受け止めることが出来ていないためと考えられています。また整理できていないために、怒りを感じた時の出来事を繰り返し思い出してしまうと考えられています。さらに、怒りを感じた時の出来事を思い出すことで、その時の怒りも思い出すため、その怒りを整理し、受け止めることがますます難しくなると言われています。

では、怒りが収まる過程についてみると、怒りを感じた直後は感情的に振る舞うことが多いものの、2-3日すると、その時の出来事を客観的に受け止められるようになり、1週間するとその感情や考えに影響を受けることも少なくなるそうです。

つまり、怒りを収めるためのポイントは、その時の出来事を客観的に整理し受け止めることであり、そうすることで、より早く怒りを収めることができるものと言えそうです。

なるほど、と言うことは、いわゆる「怒りを感じた時には〇秒数えましょう」というのは、ただ〇秒数えただけでは意味が乏しく、その間に冷静になって情報を客観的に整理する余地を持ちましょうと言うことなのでしょうね。逆に言うと、情報を客観的に整理し受け止めることが出来ないと、怒りはくすぶり続けると言うことになるものと思われます。

 

まとめ

話を見返しと仕返しに戻しますと、怒りという感情に流されて、その怒りを相手にぶつける仕返しは、その後の対人関係の悪化や罪悪感、自己成長を感じられないことを含めると、怒りの使い方としては、メリットよりデメリットの方が大きいようです。

一方で、怒りという感情に流されず、その原因について考え整理し、受け止めた上で、どうしたら解決できるのか?といった過程を経る見返しは、怒りからより早く解放され、その出来事をモチベーションに自己成長を促し、周囲からの評価も上がる可能性を秘めているため、怒りを上手く使いこなすために有効な方法のようです。

確かに、スポーツ選手等のドキュメンタリーやインタビューを観ていますと、勝負に負けたり、力の差を見せつけられた選手が、不甲斐ないといったように、自身に対する怒りとも取れるようなコメントをされ、その後、自身のプレイを分析して、トレーニングという努力を経て、さらに成長していくと言った、見返しの仮定を踏んでいるなと思うようなエピソードを目にすることがあります。

そう考えると、個人的には、今度怒りを感じたら、せっかく感じたのだから上手く使ってやろうと思ったりもします(簡単ではなさそうですが)。

ただし、見返しも度が過ぎると、集中しすぎて周りのことや先のことが見えなくなったり、心身に負担が掛かるとのデメリットもあるようですので、見返しもこだわりすぎない程度に使うのが良いようです。

 

いかがでしたでしょうか?怒りを感じた時は誰しも冷静でいられることは難しいことですが、少し冷静になったら見返しを意識してみてはいかがでしょうか?

それではまた

 

今回参考した資料は以下になります

www.jstage.jst.go.jp

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