ライデックスタッフの加藤です。新型コロナウイルスの流行が始まって早1年。
ライデックのある千葉県では2回目の緊急事態宣言はまだ解除されていません。
ADHDグループカウンセリングは開催できないまま1年以上たってしまいました。
現在は感染症予防対策を行いながら個別のカウンセリングを続けています。
ご興味のある方はお問合せください。
今日はライデックで購入している「発達障害を取り扱った漫画」についてご紹介します。ライデックに所属している医師や臨床心理士に素朴な疑問もぶつけてみました。
1.リエゾン-こどものこころ診療所-
2.娘が発達障害と診断されて…母親やめていいですか
3.僕の妻は発達障害
一部内容に触れている部分があります。ご了承下さい。
リエゾン-こどものこころ診療所-
原作:竹村優作 漫画:ヨンチャン
原作者の竹村優作さんは「週刊少年マガジン?モーニング 第1回漫画脚本大賞」で奨励賞を受賞され、今作が漫画脚本デビュー作。本業はライター。漫画を描かれているヨンチャンさんは韓国の方ですが、日本で初めてマンガ学部を設置された京都精華大学を卒業されているとのことです。
さて、この作品は小児科の研修医が主人公で郊外の小さな児童精神科のクリニックで研修を受けることになった(正確には飛ばされる形ですが)遠野志保医師を中心とした物語です。2~4話でひとつのエピソードとして構成されており、主人公自身も医師となったあと発達障害と診断され、時には「今さら発達障害と言われても受け入れらない」と激しく葛藤しています。
登場するこどもたちの環境に読んでいて苦しくなるような場面も出てきますが、登場するこどもたちの未来が明るいものであるよう希望のある終わり方をしています。
発達障害だけでなく児童精神科で取り扱われる他の疾患を抱えたこどもも登場しています。治療は環境面も一緒に整えていく必要があり非常に難しいものだと感じます。
現在3巻まで発売中、講談社のサイトで一部が無料公開されています。
https://morning.kodansha.co.jp/c/liaison/
私の素朴な疑問をここで。
医師に聞いてみたい!
「専門科はいつ決めるの?あとから変えることはできる?」
主人公の遠野志保医師は小児科医希望でしたが、児童精神科で経験を積むうちに児童精神科希望に変わっていきます。彼女は研修医の立場ですからまだ変えられるのかなと思いますが通常はどのように専門科を決めていくものなのでしょうか?またあとから変わることはできるのですか?一度決めたら他の科の診療は不可なのでしょうか?
ライデック代表松澤より回答
→ 医師研修制度と多くの医師の専門科を決める時期はこんな感じです。
①〜1967年 医学部卒業→インターン(1年間の臨床研修)→国試→医師:専門科はインターンの間に決める
②〜2003年 医学部卒業→国試→研修医:専門科は医学部最終学年で決めてることが多い
③2004年〜 国試→医学部卒業→初期研修医(2年)→後期研修医(3年):専門科は初期研修医の間に決める
という感じです。
かの有名漫画「ブラックジャック」の主人公間黒男(はざまくろお)は①のインターン後も国試を受けず、無免許(モグリ)のままその天才を発揮したのです。
私は②の時期です。③に移行する前でした。精神科に行こうと決めたのは…卒業するわずか2ヶ月前です。
今の若い医師は大抵は学生の間に何を専門にしようか大体の当たりをつけ、初期研修医の間に実際に志望科を経験した上で改めて考えて決めていくのではないでしょうか。
で、今も昔も後から科を変えるのは完全に自由です。私の親しい先輩は、皮膚科(2ヶ月)→麻酔科(2日)→精神科(半年)→皮膚科、と目まぐるしく動き今は皮膚科医です。遠野医師のように小児科から児童精神科(大抵は精神科の一部門ですが)に変わるということはありえます、というかそういう人知ってます。
臨床心理士に聞いてみたい!
「試験者によってWAISやWISCなどの検査結果は変わる?」
ご両親に検査結果を伝える場面で保護者の方から「別の病院で受けたら結果が変わることがあるんですか?」との質問が投げかけられるシーンがあります。実際はどうなんでしょうか?臨床心理士のスタッフに聞いてみました。
結論から言うと、「検査の構造上は一定の結果が出ることが担保されているが、環境やコンディションの影響は受けることがあり、100%同じ結果が出るとは言い切れない」といえます。
成人の発達障害診断では、知能をみる検査(例:ウェクスラー式など)、生育歴や現症を聞き取る検査(例:PARS-TRなど)、症状をスクリーニングする検査(例:AQ・CAARSなど)などが用いられます。どの検査も、統一されたプロトコルに則り、結果は統計的な処理によって算出されるため、検査者による大きなばらつきが出ない構造になっているのです。
一方で、特にご本人のベースラインの力を見る知能検査の場合、環境や本人のコンディションの影響を受けることもゼロとは言えません。例えば、聞くことが苦手な人が、うるさい環境で聞いて覚える課題をやったら?抑うつ状態で推論や集中が難しい時に検査を受けたら?出せるはずの力よりも低い結果が出る可能性が考えられますよね。
そのため、検査者は環境をできるだけフラットに整え、被検査者の方にはコンディションの整った状態で受けてもらうことが望ましいです。
また、繰り返し検査を受けることについては、現在の状態像を回答する質問紙検査の場合、問題ないといえます。
しかし、状態像ではなくベースラインの力をみる知能検査の場合、繰り返し受検して問題を覚えてしまうと、本来の力と異なる結果が出てしまう危険性があります。岡田智ら(2010)の研究では、WISC-Ⅲの場合、練習効果を考えると2年間は間を空ける必要があるとしていますが、とはいえ期間を空けて繰り返し受検することは全く推奨できません。
このあたりは、以下の記事でもふれていますので、よろしければご参考まで。
心理士が考えたい”知能検査を受けること”の意味 - RIDC_JPのブログ
娘が発達障害と診断されて…母親やめてもいいですか?
絵・にしかわたく 文・山口かこ
山口かこさんの実体験をもとにしたコミックエッセイです。現在の活動は見つけられませんでしたが書籍上ではライターとして活動されている模様でした。
不妊治療を経て授かった"たからちゃん"が生まれたときから中学生になるころまでが描かれています。子育てしていく中で違和感を感じ始め、インターネットで検索することがやめられず、どんどん追い詰められていく様子、絵がコミカルなので悲壮感をそこまで感じませんがチャットや宗教にのめりこみ結果として離婚に至るところなど壮絶です。
すべてのページが漫画で構成されているのではなく、ところどころに専門医との対話形式のインタビューがあり、とてもわかりやすいです。定型発達との明確な境界はないと書かれており、診断の難しさを感じます。
医師に聞いてみたい!
たからちゃんは2歳後半で「広汎性発達障害」と診断されていますがこれは診断の時期としては早いでしょうか?
次に紹介する「僕の妻は発達障害」では大人になってから診断され、今まで生きづらかったような描写があります。やはり早期診断は大切なのでしょうか。
ライデック代表松澤より回答
現状日本では2歳での診断はとても早いです。どちらかといえば日本の医師の診断時期はかなり遅れてしまうことが多いのが問題といえるでしょうね。しかし発達障害特性は2歳時には既にはっきりすると考えられるようになっており、早期診断するシステムが望まれています。
早すぎない?という気がするかもしれませんが、特性が不適応につながることがなければそれはそれでいいし、支援が必要なら早いほうが必要な手立てを早くから打てます。ただ、それぞれに必要な支援が異なることや、成長のために最適な支援は判断が難しいことがあると感じますね。
僕の妻は発達障害
ナナトエリ・亀山聡
ご夫婦で漫画家、共作されているそうです。二人とも特性をお持ちで、エッセイではありませんが参考にされている部分も多々あるとか。
物語内では大人になって発達障害と診断された妻とそれを支えつつ日々葛藤している漫画家のアシスタントをしている夫の生活が描かれています。現在と過去が行ったり来たりするので時系列の物語ではありません。
夫がとにかく優しいんですよね。でも妻の起こす事件を受け入れきれず、絶えず葛藤している…検査を受けたいという妻に対して「おおげさ、気にしすぎ」と言ったり、発達障害と診断されたらどうなるかと不安になったりとても人間らしく描かれています。まだ物語が続いていて妻の就労で問題が起きてきそうです。仕事がなかなか続かない場面も既に描かれています。
抗ADHD薬が合わない場面もありますがその後投薬治療は受けているのかは2巻までの中ではわかりませんでした。続きが発売されたらチェックしていきますね。
ちなみに抗ADHD薬の効き方について沖田×華さんの「こんなに毎日やらかしてます。」の最後の方に記述があります。何度説明受けても"伝達物質"とか"シナプス"と言われた時点で理解しようとする気力を失う私にもわかりやすかったので興味のある方はご確認ください。
抗ADHD薬については過去のブログにも色々書いてあります。それも併せて読んでいたけると嬉しいです。
リエゾン ーこどものこころ診療所ー(1) (モーニングコミックス)
リエゾン ーこどものこころ診療所ー(2) (モーニングコミックス)
リエゾン ーこどものこころ診療所ー(3) (モーニングコミックス)
母親やめてもいいですか 娘が発達障害と診断されて… (文春文庫)
それではまた。
リアルな医者漫画はどれだ!?
突然ですが代表です!
漫画が扱われたので今日は2つ医者漫画をご紹介したいと。
「リアルな医者漫画ってどれですか?」と聞かれることがあります。
私は最初に読んだ医者漫画は自分世代の多くと一緒で「ブラックジャック」でしたから、あれがリアル、と信じ込んでたのに医学部で勉強すると全く違う!!!!と気づいたクチです。とはいえストーリーは好きですよ、いまでも。ピノコちゃんなんていないぞ、と思うだけで。
そんなわけで私が読んだ範囲で医者とその生活を最もリアルに描いているのは...
です。この漫画はとある大学病院の外科教室に入局(医者が集まっているところ、なぜか医局といい、その一員に加わることをこう言います)した研修医、なな子医師の活躍ぶりをコミカルなタッチで描いています。
何がリアルかと言えば、私は「ゆるさ」だと思っています。正直医者や医療界を描く漫画(ドラマも)はシリアスな時間が長すぎです。シリアスタッチは感動的ですが、実際に生きている医者がいつもあんなに息詰まる場面を体験しているわけではなく...この漫画の主人公たちのように、気負いすぎず、だからといって不真面目でもなく目の前の出来事に向かい合い、素直な感想を持ちながらプロっぽく成長していくのです。
ただ、この漫画が描かれているのは上述した医師養成課程が②の時期。私の世代にはとってもリアルだったけど、今の医師からするとちょっと違うかも?
さて、直近の私のオススメは珍しくも病理医を主人公に据えたこの漫画です。
ちょっと前にTOKIOの長瀬智也が主人公の岸京一郎を演じるドラマ化もされてましたね(未見ですが)。
私自身は実は医者になって20年以上経ったというのに、実は職場で病理医さんと話したり、一緒に仕事をしたことが全く無いのです。そう、手術もなければ組織診・細胞診すら無い精神科にとって最も距離の遠い医師が病理医です。
そんなわけで描写がリアルなのかどうかもわからず、へぇと思いながら読んでます。
病理医ってプレパラート1枚の組織切片から診断をつけ、臨床医の思い込みを蹴散らすDoctor's Doctorでもあり、それはもう膨大な医学知識を持ってる非人間的な存在、というイメージではありますね。まさにそんな存在で、臨床医の思い込みをぶった切る主人公岸と、ひょんなことから病理医見習いになった宮崎医師の成長ぶりが楽しめます。
ただ、病理医に変人が多いのは昔の病理の教授たちの顔を思い浮かべるに納得してます。今の先生方には怒られちゃうかもしれませんが。
それにしてももっと病理を勉強しておくべきだった...と後悔してます。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
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