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意外に多い片頭痛について

代表です。

世界は新型コロナウイルス感染で揺れていますね。

影響...というと様々なイベントが中止決定されていますが、私の講演も予定されていたものがキャンセルになりました。

感染拡大を防ぐ、できるだけ感染者増大のペースを緩やかにする段階の中では仕方無いことですね。私は感染症専門家ではないので特別なコメントはできませんが、感染拡大予防としては、とにかく手洗いを励行していきましょう。

  

さて、今日の話題は片頭痛です。

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発作的な頭痛が様々な頻度で生じ、頭痛とともに、随伴症状と言われる様々な症状があります。光や音に対する過敏性(暗くて静かなところに移動しないと辛いです)や、吐き気・嘔吐など。また、一部の方では、Auraと呼ばれる視覚的な前兆があるのも特徴です。

 

代表自身片頭痛であり、日頃から悩んでいます。

実を言うとこのblogも毎週木曜日あたりに更新を考えているのですが、片頭痛に襲われてしまって更新が滞った次第。

以前から個人blogで取り上げていますので、それも紹介しつつ。

 

片頭痛は特にADHDで多いかも

慢性頭痛の代表的疾患ですが、外来をしていますとやはり結構苦しんでいる方が多いことに気づきます。

 

実は幾つかの観点から発達障害との絡みがあったりします。

chadd.org

例えば、こんな記事があります。日本語での記事がほぼ無いので英語記事ですみませんが、近年、片頭痛とADHDの関連を指摘する研究結果が多数報告されています。

 北欧からの大規模な対象人数の報告があります。Fasmerら(2010年)は、ノルウエーの処方データベースを調べたところ、全対象者464万人のうち、片頭痛薬は8万人に処方されており(全対象者の1.75%)、抗ADHD薬は1.8万人(同じく0.4%)。そしてその重複を考えると、20代から50代において、ADHDであることは片頭痛リスクを約2倍に高めることを報告しています。

また、デンマークのHansenら(2018年)は2.6万人を対象にADHD傾向と片頭痛の関連を調べたところ、やはりADHD傾向が高いと、片頭痛リスクは1.8倍になっていたそうです。

こんな感じで、見積もりに一定のバイアスがかかってはいますが、ADHDと片頭痛の絡みの報告は多く、ADHDと片頭痛の遺伝的共通因子がありそうです。が、一点、気をつけて欲しい点があります。特にお子様について。

頭痛があるとしっかり脳は働けません。頭痛持ちにとっては当たり前ですが、頭痛がある中で授業に集中したり、板書をしたり、活動に参加することは大変な苦痛で、十分に上手くできないのです。

従って、片頭痛そのものがもしかしたら子供によってはADHD的特性と思わせる症状を出しているかもしれないし、ADHDの子であったら片頭痛を抱えることでより特性が強く感じられているかもしれません。

 

片頭痛の発症は早い

さて、そんな片頭痛ですが、大人の病気、と思っている方多いのではないでしょうか。でも実際には子どもの病気なんです。正確には、子どもの頃から始まる病気、です。

以前調べて驚いたのですが、アメリカの報告では、学齢期における片頭痛の有病率は10%、片頭痛患者の50%は12歳以前に発症し、思春期前の片頭痛発症年齢中央値は、男の子で7歳、女の子で11歳です。すっごい若い。

日本でも飯田栄俊氏の「片頭痛断の遅延状況」という論文に拠れば、 

対象とした44例における片頭痛の発症年齢は平均18±7歳。25歳までに発症している場合が多い。一方、診断を受けたのは平均26±8歳。発症から診断までの経過年数は、発症が20歳を超えていた15例は5.3±3.5年。それに対して、20歳以下で発症した29例は9.5±5.9年。

多くの方が、子どもの頃、見逃されているわけです。そういえば私も自覚したのは小学校2年、8歳のときですが、診断されたのはなんと医学部で片頭痛について学んで大学で診断されたときですから、診断までに13年。

 

早くに診断を、と書いた昔の記事はこちら。

neurophys11.hatenablog.com

 

発作時は薬を使う

そして、発作時の治療についてです。

今は特効薬があるんですよ。

にも関わらず...

上記の通り片頭痛は子ども時代から多いわけですが、十分に治療されているとはいえません。

その理由の1つとしては、子どもに対する服薬の忌避感があるかと思います。

薬は怖い...そんな感情は当たり前ではあるのですが、発作そのものがもたらす様々なデメリットを考えると、早く薬を服薬して発作時間を短くし、早めに回復した方が遥かに有意義です。とりわけ、いざ頭痛が始まってしまうと、トリプタン系と呼ばれる特効薬が必要なことが多いのです。

さらに言えば、頭痛など気合の問題だ、とか、熱もないのに大丈夫だよ、という精神論的誤解でしょうか。ちゃんと苦しいんですよ。

発作時の治療についてもまとめていますので宜しければ。

neurophys11.hatenablog.com

 

予防はある程度可能だ

さて、そんな苦しい片頭痛ですが、 予防はある程度まで可能です。

1つには、片頭痛をもたらす誘因を避けることです。

人によって違うのですが、例えば私の場合は直射日光、密閉空間での人混み、塩素系薬品、アルコール、などでしょうか。

そんな誘因を避けるのが1つです。

ちなみに、そんな誘因で思い浮かぶのは...そう、感覚過敏ですね。片頭痛は特に発作時に光や音への過敏が出てきて、くらーくて静かな部屋にじっと横になっていないと辛くなりますが、私の誘因を見てわかるようにそもそも感覚過敏が一定程度ありそうです。

ASDの方と感覚過敏が話題になることも多いのですが、そんな感覚過敏症状は片頭痛を誘発していることもあるのではと推察します。

予防の第2段は予防薬の服薬です。 

誘因によっては、日常生活や職場で避けがたいものがあるでしょう。人混みが片頭痛を誘発するからといって、社会活動が送れなくなるのも避けたいところです。

また、頻度がとりわけ多く、毎日のように片頭痛薬を服用しないといけない状態になると、薬物起因性頭痛も起こしてきますから、何のための治療なのやらわからなくもなります。

そんなわけで、予防薬についてはこちらを。

neurophys11.hatenablog.com

 

以上、今日は片頭痛についてまとめてみました。

苦しんでいる方も多いので、ご自分の頭痛の理解と、また頭痛持ちへの理解が広まれば幸いです。

 最後に、これから使われるであろう、新薬について。注射薬ですが、もう承認されていますので、早めの発売を待ちたいところです。

neurophys11.hatenablog.com

 

 

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本記事は株式会社ライデックによって作成されました。できるだけ、簡単でわかりやすい言葉で、英語を日本語に意訳していますが、データの解釈や内容表現に誤りがあれば、コメント欄にてご指摘ください。また、弊社HPTwitterにてさまざまな発達特性情報を発信していますので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。

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