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ADHDの女性は見逃されていることが多いのはなぜだろう_(1)

代表です。

今年は大変な台風が2回も通過しましたが、皆さんがご無事でありますよう、またもしこのページを見た方に被災された方がおりましたら一刻も早く日常が回復しますことを祈念しております。 

さて、今日はこの話題についてです。

女性のADHDは小さい頃見逃されている?

 実はこの件については、先日某テレビ局の方にお話させてもらったり、またつい最近良い解説記事が(英語です、後ほど紹介)あったりと、それなりにタイムリーな感じではあります。

私自身もこの3-4年、外来で発達特性のある方々を診ていて思います。

ADHDの男女比って実は半々か、少なくても女性はもっと多いのでは?

と。

さっそく図を。

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ということで、図をみておわかりのように、ADHD単独診断の方は30-40代になると受診が増え、さらに女性が80%を占めているという。

たった1つのクリニックの話ですし、私の診断が絶対に正しいわけでないことを差し引いても、どうやら、ADHD特性のある女性は受診が遅れやすく、一定年齢以上では男性以上にその問題が顕在化しやすい傾向がありそうと考えました。

 

そうしたところ、下記記事を弊社Twitterに流れていたtweetから拾わせてもらいました。

 

www.additudemag.com

 

タイトルは、「ADHDらしさは女性では違っているようだ、なぜなのか」(大分意訳)

 

記事のポイントを追いつつ、先に示したデータの考察も含めて考えてみます。長いので今日は前半。和訳の拙さはお許しを。

 

女性が見逃される多い理由

 

・ADHD特性は今でも少年/男性の特性だという認識が強く、それがため過少診断/誤診に繋がっている。

・女性のADHDの方はどちらかと言えば感情の問題が関わる疾患、例えば気分障害や不安症と診断されていることが多い。

A woman might come in presenting emotional symptoms, and the ADHD that’s underneath might be missed.

   感情的な症状を呈して現れる女性の背景にあるADHD特性は見逃されてしまうのです。

 

    これは確かに、と思うのです。私(代表)が会った患者さんでも、主訴を「不安」「うつ」として初診を迎えた方が、生活史を聞いていると実はADHD特性がずっと気づかれずに頑張ってきたことが今の不安に繋がってしまっているのではとわかることがあります。抗ADHD薬がこれまでに無い救いとなることもあるのです。

 

ADHDの女性は子供の頃頑張りすぎていることが多い

 ではなぜ過少診断に至るのか。その理由としては、

・ADHD少女は同年代の少年に比べてとっても症状をカバーするべく頑張って特性面を補う。

・たとえ自分は「(他の子と)違う」ということに気づいていたとしても、その場で最大限上手くやれるように「陽気な子」として振る舞おうとする。

 

  この部分も賛成です。そう、結局女の子のほうが男の子よりも他者を意識し、他者の期待に応えるよう振る舞う子が多い、ということなんでしょう。頑張っているんです。

 

そして、子どもがADHDであるサインに最初に気づけるのは先生であることが多いのですが...

Yet because some teachers still think of ADHD as a male disorder, they tend to suspect the disorder in boys but not girls.

それでも先生の中にはADHDは男の子の障害だと思う人がまだいて、ADHD特性があることを男の子の中には疑っても、女の子には疑わない傾向があるのです。

この思い込みは結構強固で、たとえ女の子がそれっぽい振る舞いをしたとしてもそのようには診断しないのです、と。

 

ADHDは男の子に多い、そう認識しているとなかなか発見できないでしょうね...。

 

診断基準は見直されるべきかも?

 

Nadeau医師というメリーランドで開業している方がいるようですが、こんなことを述べています。

・多くのケースで、何年も仕事や家庭、子育ての義務になんとか釣り合いを取るべく格闘してきた後にADHDを疑ってやってくる。

・女性の中には、自分の問題の根っこにADHDがあることをメディアで見て疑うことでやってくる方々も多い。

・中には自分の子どもがADHDを診断されて、自分にもあるのではと疑って来る。

・ADHD診断の前に言われていたのは「うつ」であることが最も多い。

・そういった女性たちは、何年も不安症やうつ病として治療されてきたけど、まだ問題が解決されていないと語る。

 

the criteria indicate that ADHD is to be considered as a potential diagnosis only if the patient has experienced significant symptoms from an early age. Yet, as doctors are starting to realize, many girls with ADHD “fly under the radar” during early years with the disorder.

 ADHDは、特徴的な症状が早い段階で(DSM-5では12歳以前には)出てくるときに限って診断を疑うと示唆されている。が、今医師たちが気づき始めているように、多くのADHD少女たちは早い段階では「気づかれてない」のだ。

 

 そう、ということで、女性は見逃されていることが多いのですよ。

男性だけじゃないって目で見ていただければ、気づきやすいのではないかと。

気づかれない程度の症状しか無いのであればいいじゃないか、と思う方も居られると思いますが、そういった女の子が将来、負担が増したときに突如崩れてしまったり、二次的にうつ病や不安症となることで社会生活が上手く立ち行かないということになる可能性があるのです。

ADHD特性がある=治療対象、とは限らないのは事実ですが、気づいて特性に応じた対応を取ることに悪いことはありません。

 

次回また続きを。

  

 沖田さん、とってもいいですよね。

この巻の最終章には、当社スタッフが「(代表の説明と違って)薬の効果の説明がわかりやすい!」と絶賛した画がありますよ(かなり悔しい)。

 

女性のADHD (健康ライブラリーイラスト版)

女性のADHD (健康ライブラリーイラスト版)

 

 女性の...と銘打つのが正しいと言っていいのかと迷うところですが、とりわけ日本では女性に対するある種の期待(家事や子育てを担う)が大きい現実があったりしますからね。ADHDであること、にも辛さが男性とは違う面があります。

 

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