臨床心理士のお仕事について
こんにちは、そして初めまして!
ライデックのスタッフで、臨床心理士の田汲です。
今週は、私の持っている“臨床心理士”という資格と仕事について、臨床心理士として実際に働いている私の実体験からお話できればと思っています。
臨床心理士って一体どこにいて、何をする人なのか…そんなことを少しわかってもらえたら嬉しいです。
臨床心理士ってどこにいるの?
臨床心理士の資格認定は1988年からスタートしており、歴史としては約30年ほどの民間資格です。
学問基盤としては臨床心理学ですが、活動領域によって医学や社会福祉学、教育学などの知識も必要になってきます。
こころの問題に対応するための民間資格はたくさんあるのですが、臨床心理士は、実は多岐にわたる分野の心理職で資格要件とされています。その一部を下記に並べてみました。
医療・保健:病院、精神保健福祉センター、保健所など
教育:行政の教育相談所、幼稚園、小中学校、高等学校など
福祉: 児童相談所、療育施設、障害者施設、老人福祉施設など
司法:家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、刑務所、科学捜査研究所など
産業:企業内の健康管理機関、外部の従業員支援機関、ハローワークなど
大学・研究所:大学学生相談室、研究機関、大学附属臨床心理センターなど
その他:私設の心理相談室
ちなみに、この中だと私は、精神科病院、精神科クリニック、研究機関、行政の教育相談所での勤務経験があります。
普段あまり目にする仕事ではないかもしれませんが、実はいろいろなところに臨床心理士がいて、相談できる場所もたくさんあります。
下記のHPにそんな場所が載っているので、興味のある方はのぞいてみてくださいね。
・臨床心理士に出会うには(日本臨床心理士会)
臨床心理士ってどんなことをしているの?
臨床心理士は先に述べたように活動領域が広く、領域によって具体的な職務内容が違ってきます。
なんとなく、“悩んでいる人の話を聞く”みたいなイメージが持たれやすい仕事ですが、どの領域でも共通して必要な専門業務として、以下の4つがあります。
①臨床心理査定
:心理検査や知能検査や観察などを通して、その人の特徴や起きている問題のしくみを見立て、その人に適した支援方法を考えることです。支援の前提として、とても重要な作業です。
②臨床心理面接
:いわゆるカウンセリングです。認知行動療法、精神分析、来談者中心療法など、さまざまな理論にもとづいて行われます。心理士が①での見立てや自分の専門性をふまえ、どの理論をどう使うかを考えながら進めていきます。
③臨床心理的地域援助
:講習会やコンサルテーションなどがイメージしやすいかもしれません。近年の例で言うと、被災地支援や、いじめ・自殺への緊急対応なども含まれます。いろいろな機関や職種とやりとりし、情報や環境を整理する役割があります。
④上記①〜③に関する調査・研究
:多くの心理士は学会に所属しています。研究を読むこと・自分の研究を発表することを継続し、知識や技術を常にアップデートしながら日々の実践に活かすことが必要不可欠です。
なかなか具体的にわかりにくいと思うので、一例として、精神科医療領域ではどんな仕事をしているのか、私の経験を少しご紹介します。
精神科病院やクリニックでは、検査と面接が業務の大きな柱という感じです。
心理検査や知能検査を行いますが、特に知能検査はご本人に結果をお返しし、日々の生活や今後にどう役立てていくかを話し合います。
ちなみに、検査については後日別の記事で詳しくお話する予定です!
もう一つのメインは患者さんとの面接です(私が面接をやっているのはクリニックなので、そこでの一例だと思ってください)。
クリニックでは、成人の方だと不眠や職場ストレスといった悩みが多いかな、といった印象です。もちろん相談内容はさまざまでで、最近は“自分は発達障害なんじゃないか”と相談してこられる方もよくいらっしゃいます。
成人の方の面接では患者さんの内面について話し合っていくことも多いですが、必要に応じて、医師や精神保健福祉士ら他職種と相談して家族や職場と連絡をとり、環境の調整や就労の相談を進めていく場合もあります。
患者さん本人の内面への対応と併せて、周りの環境を整えていく必要があるケースがたくさんあるなあ、と日々感じています。
あとは、発達障害の方向けに集団プログラムを病院でやっていたこともあります。安心して話し合いが深められるように、参加者ひとりひとりの特性を把握しながら声掛けをするような役割でした。
これは今のライデックのプログラムにも活かされています。
・・・とてもざっくりとした説明ですが、こんな感じでしょうか。
ちなみに教育相談ではこどもの知能検査をしたり、遊びを通した面接(プレイセラピー)を行ったり、保護者相談を受けたり、電話での相談を受けたり、教員やスクールカウンセラーと連携したり。
病院とはまた少し違うお仕事も含まれてきます。
病院でも教育機関でもどこでも、ほかの職種との連携は常に意識しながら仕事しています。
前回のブログで精神保健福祉士の齋藤も言っていたように、専門職同士の連携は、その人に本当に必要な支援や資源を提供するためにとっても大事なことです。
国家資格化について
臨床心理士ですが、実はずっと国家資格化の話が出ていました。
そしてついに、平成29年9月15日に「公認心理師法」が施行され、日本で初めての心理職の国家資格として,「公認心理師」制度が生まれました。
昨年度には第1回の試験が実施され、27876人が合格しています(私も合格しました)。
参考:公認心理師(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
公認心理師には、臨床心理士とはまた異なる業務を資格の中身として定めています。その中には、
「保健医療,福祉,教育その他の分野において,専門的知識及び技術をもって(中略)、心理に関する支援を要する者の関係者に対し,その相談に応じ,助言,指導その他の援助を行うこと」
「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと」
が含まれます。
公認心理師では、関係機関や多職種との連携が業務の柱として明言されたこと、こころの問題についての知識の広い普及が重要とされたことが、臨床心理士資格との大きな違いのひとつでしょうか。
スクールカウンセラーを始めとして、さまざまな心理職の資格要件にも公認心理師の名前が上がり始めており、これから耳にする機会が増えていくと思います。
今回は臨床心理士にまつわる基本的なことをお話してみました(まだまだお伝えしきれていないこともたくさんありますが…)。
これからも、私の担当記事では、きもちの整理に役立つ豆知識や心理検査についてなど、ご紹介などができればと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
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