こんにちは。スタッフの田汲です。
緊急事態宣言の解除から早くも3週間が過ぎましたね。
リモートワークが解除された方、今も自宅で過ごすことの多い方、宣言前から出勤を続けられていた方、様々かと思います。
立場は違えど、どの方も、コロナウイルスによって世間や生活様式の目まぐるしい変化を目の当たりにしてきた数ヶ月だったのではないでしょうか。
今回は、そんなコロナ禍に晒された、わたしたちの「心」について触れたいと思います。
緊急事態宣言が長引くにつれ、メディアでも“コロナ疲れ”といったテーマが扱われ始めた印象があります。
コロナ禍に晒された数ヶ月、わたしたちの心はどんな影響を受け、どのように動いてきたのでしょうか。そして、これからどのように心の状態を保っていけばいいのでしょうか。
コロナ禍で起こりうる心の変遷について
コロナ禍で今もストレスを受け続けるわたしたちの心と身体をシンプルに説明できるモデルの一つに、セリエのストレス学説があります。
セリエは、「ストレス」という用語を初めて用いた、カナダ人の生理学者です。
セリエによれば、ストレスを引き起こす外部環境からの刺激(=ストレッサー)によって、生体に一定の反応が起こるとされています。
そして、その反応には3つの段階があります。
第1期 警告反応期
ストレッサーを受けた生体がサイレンを鳴らす時期です。ショックに適応できずに体に反応が起こる(血圧低下、動悸など)ショック相から、ショックに抵抗しようと反応が起こる(体温上昇、副腎の肥大など)半ショック相がみられます。
第2期 抵抗期
ストレスが長引くと、生体の自己防衛機能が働く時期です。ストレッサーと抵抗力とが拮抗し、この間は一定のバランスを保つことができます。しかし、エネルギーが不足してくると、疲弊期に突入します。
第3期 疲弊期
さらに長引くストレスに生体が抵抗できなくなり、ストレッサーへの抵抗力が弱まる時期です。抵抗力は段階的に衰えます。
これはとても古典的なモデルですが、ストレッサーに晒され続けると、人の身体は段階的に弱まっていくことが理論化されてきたんですね。
長引くコロナ禍を考えると、これからどんどん疲弊期に入っていくことが予測されます。
また、アメリカのキャプランという人の危機理論も参考になるかと思います。
キャプランの理論の中では、自然災害、近親者の死亡、犯罪被害といったことがきっかけとなり、心理的なバランスが崩れることで危機状態に陥るとしています。
危機状態で生じる緊急事態ストレスとして、具体的には以下のようなことが挙げられています。
これらの反応は、異常事態で“誰にでも”起こりうる、“正常な反応”とされています。これはとても大事なポイントです。
このような反応が起こるのはわたしたちの心が弱いからではないし、わたしたちが悪いわけでもない。
それに、身体や心がちゃんとSOSを出せているということでもあります。
自分のSOSが感じられないと、ストレスを和らげる対策を考えることもできませんよね。
そのためにも、反応が生じることはわたしたちにとって必要で、大事なことなんです。
しかし人によっては、ここから病的な状態に移行していく可能性もあり、この危機に対する適切な介入が必要不可欠になります。
特に、心理士としては、より丁寧な介入が必要な方がいると考えています。
このことは日本精神医学会の“Psychiatry and Clinical Neurosciences“でも指摘されています。英語ですがリンクを貼っておきますね。
・Public responses to the novel 2019 coronavirus (2019‐nCoV) in Japan: Mental health consequences and target populations
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pcn.12988
これによると、①感染者や病気の患者とその家族・同僚、②中国人コミュニティ、③精神科既往や身体的な既往を持つ人、④ヘルスケアにかかわる援助者(特に患者や隔離された患者と直に接する看護師と医師)といった方々は、現在丁寧な支援が必要と考えられているようです。
特に③については、現状のカウンセリング場面から私が感じる所感としてですが、発達障害傾向の強い方も当てはまるように感じています。
変化の苦手な方はできる範囲でいつも通りのルーティーンを続けたり、より自分が安心できることやリラックスできることに取り組んだり、周りに相談しながら工夫していけるとよさそうです。
心の対策、どうする?
わたしたちは今も、コロナウイルスの脅威や、その影響で生活環境や行動様式が変化し続ける中で生きています。
コロナウイルスとの付き合いは長期戦になることも予測されていますよね。
そんな中で心のバランスをとる方法について、現在はいろいろな機関が声明を出しています。
たとえば、広い年代や対象に向けたものとしては、WHOの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)一般向け特設ページに、「メンタルヘルスとCOVID-19」があります。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)一般向け特設ページ
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/news/COVID19_specialpage_public
もう少し細かく理解したい場合は、国連の機関間常設委員会(IASC)が作成した「新型コロナウイルス 流行時のこころのケア」のブリーフィングノートがおすすめです。
福島県立医科大学グループが翻訳し、日本語版が作成されています。
一般の方向けの対策が、P.20の介入6にわかりやすくまとめられています。
かいつまんでみると、
- 人との繋がりを維持する
- 健康的な生活習慣を維持する
- ストレス対処に依存性のあるものを使わない
- コロナウイルスの情報を取り入れすぎない
- 困った時は相談する、相談や頼る先を考えておく
- 過去のストレス対処を今回も使えるようにする
といった感じでしょうか。
自粛下でのストレス解消や空いた時間を埋めるために、アルコールやギャンブルやゲームといった依存性の高いものをより取り入れやすくなっているという話も耳にしています。
いずれも、その代わりとなる行動、趣味や娯楽のようなものを取り入れていくことが大事だと思われます。
選択肢を持っておいて、状況や環境に合わせて選べるとよいですよね。
使える対処は人それぞれですが、それらを体系的に考えていくための道筋として、鳥取大学医学部の竹田伸也先生の「ココロの健康のための道具箱」は個人的に素敵だな、と思っています。
ステイホーム期間が終わった今、“これから自分が大切にしたい価値はなんなのか”考えるきっかけにもなりそうです。
自分だけではなかなか対処を導き出せない方には、日本ストレスマネジメント学会の特設ページをおすすめします。
心と身体の両面からできることが具体的に載っています。
・【特設ページ】新型コロナウイルスに負けるな! みんなでストレスマネジメント
また、子どもへの対応については、「新型コロナウイルスを心配している子どもや若者の支援ガイド」 (作成者:Polly Waite, Roberta Button, Helen Dodd, Cathy Creswell)を、石川信一先生(同志社大学)と岸田広平先生(同志社大学)が翻訳されたものが非常にわかりやすいです。
出典は日本認知・行動療法学会より。
子どもへの声掛けや周囲の大人がとるべき行動など、ステップごとに示されています。
コロナウイルスとの付き合い方には未知の部分も多いものです。
ですが、過去の知見から、今はさまざまな機関が対策のためのヒントを示しています。
ライデックのカウンセリングでも、いつもみなさんに伝えていることですが、今の自分にとって適切な対処を考え、取捨選択できることが重要です。
あなたに合った、心のバランスの保ち方がみつかることを願っています。
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