RIDC_JPのブログ

最新の医学研究情報を「正しく」かつ「わかりやすく」伝えるためのブログ

株式会社ライデック(発達特性研究所)の公式ブログ

WRAP(ラップ)

こんにちは。ライデックの齊藤です。寒かったり暖かかったり、天気がコロコロと変わりますが皆さんいかがお過ごしでしょうか。乾燥しやすい時期にもなってきました。手洗いうがい、そして乾燥対策も心掛けていきたいですね。

 今日はWRAP(ラップ)について書こうかと思います。先日、出張講座で実施してきました。

 

       f:id:RIDC_JP:20201111103636j:plain

 


WRAPとは?

正式には「Wellness Recovery Action Plan」、日本語では「元気回復行動プラン」と言います。WRAPは精神的な困難を抱えた人たちが、健康であり続ける為の知恵や工夫を蓄積して作られたセルフヘルプツールです。つまり、自分で作る“自分のためのメンタルヘルスの回復プラン”というものです。

発祥はアメリカで、自身も精神障害を持つメアリー・エレン・コープランド氏を中心に精神障害のある人達によって作られました。現在、世界中で活用されており日本でも各地でWRAPが実施されています。

 

wrap-jp.net

 

元気に大切な5つのこと

WRAPには5つのポイントがあるのですが、これは、“元気で豊かな生活を実践している人には共通する5つのポイントがある(=元気に大切な5つのこと)”というものです。これらは、コープランド氏が全米各地の数百十名以上の方を調査して見出されました。

 その1「希望」・・どんな境遇でも苦しみには終わりがくる、現状は変わると信じる、希望の感覚、可能性を感じる、という考え方。

その2「責任を持つこと」・・自分の人生を自分で生きるという責任、自分の主体性に意識を向けられるようになる、という考え方。

その3「学び」・・経験や成功・失敗からの学び、自分自身についての学び、学びから試してみて自分にとって大切なもの・役に立つものを知る、という考え方。

その4「自分自身の権利擁護」・・自分にっとって大切なことを大切にする権利、自分の内なる声に気付き声を発する勇気を持つ、人々と対話(交渉)をし自分の権利を守る、という考え方。

その5「サポート」・・周りにSOSを出せる力、互いにケアしサポートし合う力、そこから人との繋がり関係性を豊かにする、という考え方。

これらが、“元気に大切な5つのこと“と言われています。

WRAPの進め方。まずは「道具箱」を作る。

基本的にはグループワークを通して、個々のプランを考えていきます。

ワークの内容としてはまず、

①日頃から元気でいるため(元気になるため)に、私達に必要なものを探し出します。

モノであったり、行動であったり、思考であったり、人によってそれは様々で、私達はこれを「道具箱」と言います。

例えば、好きな音楽やテレビを楽しむ。お風呂にゆっくり入る。好きなアーティストの事を考える。朝にコーヒーとパンを食べる、家族との他愛ない話をする、自然を感じる、等々。

 

こうやって挙げたものは、特別に元気の要素として意識していない場合もあります。でも普段の生活からこれらが抜け落ちてしまうと、なぜか調子が狂う、スッキリしない、しっくりこない、といったややモヤッと感じる場合もあるかもしれません。

確実に元気になれる道具はもちろんのこと、無意識に取り入れることができていて、でも無くなったらどことなく心地悪い、というようなものも積極的に思い出して(探しだして)みましょう。皆さんの元気箱はどうでしょうか。

         

         f:id:RIDC_JP:20201111153527j:plain

 

WRAPの進め方。次は「ステージ別」のプランを作る。

元気でいるために必要な道具箱が出来たら、次は“自分の調子”について書き出していきます。全部で6つのステージです。以下に簡単に紹介します。

 

第1ステージ「自分がいい感じの時」

Qいい感じの自分はどんな感じ? Qいい感じのために毎日するべきこと、時々するといいことは何?

 第2ステージ「イマイチな気分になるきっかけがあったら?」(引き金)

Qイマイチな気分になる引き金は何? Qその対処法はなに?

 第3ステージ「イマイチな気分になったら?」(注意サイン)

Qイマイチな気分になるサインは何? Qそれに気付いたときの対処法はなに?

 第4ステージ「調子が悪いけどまだ自分で対応できるなら」(深刻な乱れを知らせるサイン)

Qそのサインはどんなサイン?    Qそれに気付いたときの対処法はなに?

 第5ステージ「調子が悪くて誰かに頼んだほうがよいとき」(クライシス)

※このステージは自分ひとりでは対応しきれない状況(事態)のことを指します。クライシス時の対応を、近しい人や信頼できる人と事前に話合いながら作成しておきます。

Qクライシス状況を示すサインはどんなもの?  Q連絡をとってほしい人とそうでない人

Q医療に関する情報(薬や治療、病院の必要性) Q誰に何をしてほしいか、してほしくないか、何が必要か

Qクライシス状況を脱したことを示すサイン 等々。

 第6ステージ「クライシス後」

※クライシスを脱しても、すぐにこれまでの生活に戻れるとは限りません。心身のエネルギーを蓄えていく必要もあります。

Q自分の生活を取り戻すためのスケジュールは?(あまり詰め込みすぎず、ゆっくりと回復に向けて歩み出しましょう。)

 

 以上6つのステージを簡単に書いてみました。

特に第4・第5ステージについては注意が必要です。というのも、過去の自分の具合の悪い時を思い出す作業になるため、思い出すことで調子を崩してしまう可能性があるからです。これらのステージを作成する場合は、無理をせずに調子の良い時に取り組まれた方がいいと思います。

「道具箱」も「ステージプラン」も自分で作ろうと思えば作れるものですが、WRAPはグループに参加されることも推奨されています。

 

“WRAPクラス(グループ)は、元気に大切な5つのことやWRAPを題材にして、自分について振り返り、それぞれの経験を持ち寄ることで、その場に参加している誰にとっても、生きることへの新たな学びを生み出す機会になるでしょう。”

http://wrap-jp.net/class.html

 

グループに参加することで、相互作用の効果も期待できるんですね。

 

        f:id:RIDC_JP:20201111155346j:plain

 

まとめ

今回は、自分が元気でいるためには?について書きました。WRAPは障害に関係なく、誰でも活用できるものかと思います。

各ステージを作成するにあたり自分について色々なことを学べると思います。調子の良い自分を知る、体調が変化する予兆を知る、自分が自分の力で出来るであろう限界を知り、やりすぎない・頑張りすぎないという意識を持つ、自分にとって元気を出させるもの・元気を奪うものを見つける・・。色々な自分を再確認できるかと思います。

「私は元気」「私は元気でない」という表面上の自分は認識しやすいですが、なぜそうなのかという内側の状態を知ることは、より自己理解を深めるものでもあると思います。

 そうやって作り上げたWRAPプラン、元気な状態の時は必要としないため、ついその存在を忘れがちになる場合もあります。ですが、調子が傾き始めたり、少し具合が悪い時は早めにプランを活用して欲しいので、ぜひ目の留まる場所に貼ったり置いたり持ち歩いたりして欲しいと思います。いつでもすぐ活用できるように備えておきましょう。

もちろん元気な時も、どんどん目を通して下さいね。

 

それではまた。

 

 

 ***************************************

ライデックでは、ブログ以外でも様々な発達障害の情報を発信しています。気になる方は、公式HP公式Twitterをチェックしてみてください。

 

⇢お気に入り登録、いいね等応援よろしくお願いいたします!

⇢また、読者のみなさまから紹介してほしい発達障害の話題や記事に対するコメントもお待ちしています!

 ***************************************

 発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)

本記事は株式会社ライデックによって作成されました。できるだけ、簡単でわかりやすい言葉で記述しています。データの解釈や内容表現に誤りがあれば、コメント欄にてご指摘ください。また、弊社HPTwitterにてさまざまな発達特性情報を発信していますので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。

tridc.co.jp

twitter.com

 

 

自分を知り、自分をかえていく