こんにちは。ライデックの田汲です。
マスクを付けた生活になり早数ヶ月ですね。
最近はシルクのマスクインナーを使っているのですが、なかなか使い心地がよいです。
マスクの肌荒れが気になる方は、お試しいただく価値があるかもしれません。
今回は、“レジリエンス”という概念について、それらの研究と併せて紹介したいと思います。
前回の私の記事では、コロナ禍で私たちの心は危機的状況に晒され続けていること、そのために心のバランスをとることがとても大事、というお話をしました。
レジリエンスという概念は、これまでと違う日常に適応することを余儀なくされている今こそ、 皆さまに是非知っておいていただきたいなと思います。
レジリエンスとは?
レジリエンス(Resilience)とは、元々物理学などの学問で使われており、「回復力」「弾力性」のように訳されていた言葉です。
しかし、1970年代から、過酷な生育環境の中でも適応が良好な子どもや、重い精神疾患を持ちながら適応的に生活する人々の研究から”心理的なレジリエンス”という概念に注目が集まりはじめました。
近年では研究が進み、”心理的な回復力・しなやかさ”として、心理学の分野でも使われる用語でもあります。
研究が進んだとはいえ、レジリエンスは今でも柔軟な概念であり、定義は研究者によって様々です。
ここでは、Masten et al.(1990)の「困難または脅威的な状況にもかかわらず、うまく適応するプロセス、能力、あるいは結果のこと」という定義を引用します。
また、日本では、「困難で驚異的な状態にさらされることで一時的に心理的不健康の状態に陥っても、それを乗り越え、精神的病理を示さず、よく適応している(小塩・中谷・金子・長嶺,2002)」と示している研究者らもいます。
つまり、傷つかないことではなく、危機的な状況で傷ついても回復できること、再び立ち上がれることを示す概念なんですね。
コロナ禍は、私たちが生きていく上での危機的状況のひとつとも捉えられます。
そんな中で、疲弊しても傷ついても心を回復できることは、とても大事な生きる力となるのではないでしょうか。
日本の研究者の佐藤・金井(2017)らの指摘によれば、レジリエンスの定義の曖昧さや広さは、傷つきから立ち直る個人の”能力や資質”、立ち直る”過程”、その”結果”の3つを包括しているようです。
今回の記事では、特に”個人の能力や資質”について言及したいと思います。
レジリエンスを導く“資質”とは何か
これまでの多くの研究から、レジリエンスは多くの要因によって成り立つ力であることが示されています。
その要因の一つとして、小塩ら(2002)は、
・新奇性追求
・感情調整
・肯定的な未来志向
といったパーソナリティ特性」を挙げています(ちなみにパーソナリティ特性とは、その人を特徴づける行動や思考の傾向、いわゆる人格のことを指します)。
これだけ見るととてもポジティブな人格特性を思い浮かべますよね。
しかし、小塩(2016)は、「防衛的悲観的(外山,2005)」という特性を挙げ、悲観的だからこそしっかりと準備をする傾向が良い結果に繋がる可能性もある、ということを指摘しています。
ポジティブな人格特性しかレジリエンス要因につながらない、ということではないんですね。
また、その他の要因として、平野(2016)は「環境要因」も挙げています。
これには家庭環境や教師や情緒的サポートなどがあり、環境面でもサポーティブな体制が整っていることも重要なようです。
レジリエンスは、パーソナリティ特性と環境要因との相互作用によって導かれるだろう、と考えられています。
これまでの内容を見ると、パーソナリティ特性や環境など、今から変えることの難しい部分がレジリエンスを導くように感じられます。
では、これから意図的にレジリエンスを身につけていくことは可能なのでしょうか。
レジリエンスは、”誰もが持ちうる、誰もが高めることのできる力(Grotberg,2003)”だと言われています。
そのヒントとなる平野(2010)の研究では、レジリエンス要因を“資質的要因”と“獲得的要因”の二つに分けています。
これらのうち、特に特に“獲得的要因”は、発達の中で身に着けやすいものだとしています。
自分を理解すること、他者の心理を理解すること、問題解決に向かう力を育てることが、レジリエンスを導くことに繋がるんですね。
今日は、レジリエンスという概念について、主に日本の研究をもとに紹介しました。
次回の私の記事では、“レジリエンスを身につける・引き出すためにはどうしたらよいのか”を考えていきたいと思います。
ぜひ見ていただけると嬉しいので、よろしくお願いします。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
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