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夜明け前

ドキュメンタリー映画です

こんにちは。スタッフ齊藤です。

 寒い日が続いていますが、皆様お変わりないでしょうか? 私は手洗いうがい・マスク着用の日々を意識しています。

 

本日は「夜明け前」について私が感じたことを書こうと思います。

         

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この映画、呉秀三(くれしゅうぞう)の短編ドキュメンタリー映画になります。ずっと気になっていた映画でして、やっと見ることができました!

 下記リンクから、上映場所を探すことができます。興味のある方はチェックして下さい。

 

www.kyosaren.or.jp

 
 

呉秀三とは

日本の精神科医であり、ドイツ・オーストリアへの留学、東京帝国大学医科大学教授、東京府巣鴨病院医長、松澤病院長などを歴任しました。

 

ja.wikipedia.org

 

何をした人?

 「我が邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたる不幸のほかに、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」

 

呉秀三の有名なフレーズです。

 1900年に精神病者監護法という法律が公布されます。これは「私宅で精神病者を隔離することを法的に認める」というものでした。

当時は精神科病床がほとんどない時代であり、公的機関がやむを得ないと判断した場合、家主はその承認を得て、患者を私宅の一角(いわゆる座敷牢)に監置することができたのです。これが"私宅監置”と言われるものです。

 公的に認められ且つ公的な監督のもとに彼らの監置がされていたのですが、実際はその環境は劣悪であったり、ひどい扱いをしていたりと散々なものでした。

公的な監督といっても、役所による定期的な訪問などはあまり実施されていない場合が多かったようですが。

 

呉秀三はそんな実態を調査するために、6年という歳月をかけて助手たちと共に私宅監置の全国実態調査をしました。そして『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』という調査報告書をまとめました。

 これは「精神病者私宅監置ノ実況」というタイトルで現代語訳にされ、「我が邦十何万〜」という彼の有名なフレーズが出てきています。

 

【現代語訳】呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況

【現代語訳】呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況

  • 作者:金川 英雄
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: 単行本
 

 

そしてどうなったか

調査によって実態を明らかにし(その数、監置室365、被監置精神病者361人!)、強い訴えをもった呉秀三の調査報告書は、のちに精神病者監護法を廃し、患者を病院で看る(道府県が精神病院を設置できる)という「精神病院法」という新しい法律を生み出します。

 

そしてまた彼が強く訴えていたものに、保護拘束(手かせ足かせ、拘束衣等)の廃止があります。

 

病院長を務めていた呉秀三はそこでの拘束具の使用に懸念を抱いていました。調査した私宅監置でもやはり拘束具が使用されており(精神病者監護法では病院以外でも拘束具の使用が認められていた)、こういった扱いはあってはならないと、患者の処遇改善に向け動きます。

 

映画では、呉秀三が病院の拘束具について驚くべき行動をとるエピソードがあるのですが、ネタバレになるのでここではその記載は控えます。(ネットで調べたら出てきますが。。。)

 

個人的に感じたこと

 映画では呉秀三の生涯と功績、関わった人のインタビューなどがコンパクトにまとめられています。

 現代語訳の本は、私宅監置の実態が写真や(座敷牢の)間取り図と共に、事細かく書かれています。彼が見てきた実態をまんま感じ取りたい方は、ぜひ本を読んで見て下さい。 

 

私宅監置(隔離)を余儀なくされる患者、拘束を余儀なくされる患者、そちら側からの視点は圧倒的に情報として無いので、「余儀なく」になる以前に他の方法をとられたことはあるのか、なぜそこまでなってしまったのかと感じます。

 

監置せざるを得なかった、拘束せざるを得なかった、側の視点で見ると、「せざるを得なかった」時まで彼らなりにどうにかしよう(してあげたい)と悩み苦しんでいた姿も目に浮かびます。

どちらの視点で考えてみても、とても胸が痛くなります。

根本的な原因は当時どちらの側からでも解決の不能であった疾患にあるのだと考えたいところですが...。

  

私自身は以前精神科病院でワーカーをしていましたが、患者への拘束や隔離についてその方法が本人や周囲にとって(その時は)必要だったと思える一方で、別の方法をとれるのではないか?と感じることもあり、戸惑う時も正直なところあったのは事実です。(こういった事を書くと気分を悪くされる方もいるかもしれませんね、すみません。)

 

隔離や拘束といった手段を行わずに済むには、あとどれだけの時間が必要なのでしょうね。

 

「法が改正される時、悲しいことにそれは、誰かの不幸や苦しみや痛みがあってなされている」と、ある講習会に参加した時に聞きました。

 呉秀三は助手達とともに、全国の苦しみや痛みを調べあげてそれを発表し、変化を起こした人だったと思います。

 

100年前の呉秀三らの想いや行動が持つ大切なメッセージや強い意思は、現在も決して無視できないものであると感じるばかりです。

 

「夜明け前」を見て、色々と考えさせられる機会をもらったと思いますし、また、考えなければならないなと思わされました。

とても難しい問題ですね。

 

※あくまで私個人の感想になりますが、興味のある方是非観て(読んで)みて下さいね。

 

 

行って見て聞いた 精神科病院の保護室

行って見て聞いた 精神科病院の保護室

  • 作者:三宅 薫
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2013/04/08
  • メディア: 大型本
 

 

こちらは代表からです。

呉秀三が見聞した私宅監置というシステムは当然ながら今は無く(公的、法的にはですが)、現代日本で精神疾患症状のために隔離が必要になった時、精神病院で使われるのは「保護室」です。

 

現在、保護室に入室する、という場合には、精神保健福祉法に則った、精神保健指定医という資格のある医師による診察を経る手続きが必要です。隔離、という処置は、決して誰の判断でも(医師の判断でさえも)簡単に下して良い判断ではありません。

 

本書はその病院の「保護室」とはどのような存在で、どのような構造になっているのか、を写真とともに幾つも実例を並べてくれている稀有な本だったりします。

 

これを見ると、「保護室」は、外部からの刺激を最小限として静かに過ごすための大切な部屋として機能しうることがわかっていただけるかもしれません。

 

ただし、リンク先Amazonの評価レビューで言及されているように、本書で見られる保護室の数々は、このような形で「公表できる」病院のものに限られているのは恐らく事実で、良いとはいえない運用がされている病院もあるのかもしれません(個人的には見聞していません)。

 

 

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