皆さま、
代表です。
新型コロナウイルス感染症に関しては、感染者数の推移も落ち着いてきました。
今は、ではこういう状況下でどのように従来の活動を再開していくかを検討する時期になっていますね。盛んに議論がされています。
私たちも、先日twitterとホームページのお知らせで告知した通り、6/3(水)から業務を再開する予定です。
代表です。弊社では4/2より新型コロナウイルスの感染状況を考え、業務を停止してきました。懸念していた感染リスクですが、現在の感染症数の推移から、ようやく対面業務再開を考えられる状況にあると見ています。現在は再開を6/3と考えています。どうぞよろしくお願いいたします。 pic.twitter.com/dLA9OEJf4x
— RIDC_発達特性研究所 (@RIDC_JP) 2020年5月14日
以前、このblogでも書いた通り、業務、対面業務再開には幾つかの条件が必要と考えていました。
当時は、この新型コロナウイルス感染状況について①感染予防、②感染拡大の平衡状態、③ワクチンと治療薬、の3つの観点から自粛再開に向けた要素を考察し、業務再開は「③には期待せず、②が達成された後に、効果的な①の予防策をしっかりとりつつ、ということになるでしょうか。」と書きました。
私としては、現在その状況がほぼ達成されており、必要十分な予防策を利用者の方と共有、実施できれば対面業務再開は可能と考えました。
今日はそれについてもう少し詳しく書かせてもらおうと思います。
・今は感染拡大中なのか、ひとまず収まりつつあるのか?
様々な指標は、現在、新型コロナウイルス(以下Covid-19)の日本における感染状況が少なくても一旦は収束に向かっていることを示しています。
これは東洋経済のサイト(新型コロナウイルス 国内感染の状況)から5/17に取ってきた図ですが、PCR検査陽性者数も、入院治療を要する方の数も、死亡者数もいずれもピークを過ぎ、減少傾向であることが読み取れます。また、治療を終えて、退院者数が増えてきたこともわかります。
Covid-19感染の非常に厄介な性質に、罹病期間とウイルス排出時間の双方が長い、ことがあります。つまり、一旦感染すると、治療終結から安心して社会復帰できるまでに時間がかかるということです。
このことは、医療崩壊に繋がる大きな要素です。
病院に入ってくる感染者数が著しく増えたときに、それに応じた数ほどには退院者が望めない、つまり入り口は広いのに、出口はとても狭い状況になるのです。
これでは収容人数の限られた病院の中にCovid-19患者が溢れてしまいます。
現実にこのグラフを見てほしいのですが、感染対策のための病床使用率が4月前半に急上昇して、4/19日までには112%に達していました。もちろん地域差があるので、一部地域の問題ではあったのですが、医療需要が供給に間に合わず、まさに医療崩壊寸前のところでした。
ですが、対策病床数の伸びを見てもらえばわかるように、4/20すぎには状況がかなり改善しました。御存知の通り4月に入って、感染者を受け入れてくれるホテルが名乗りをしてくださったりもして、PCR陽性でも無症候/軽症者の方で病床を埋めずに済むようになったのが非常に大きいと思います。
それでも、4/28時点でさえ、都道府県別で見ると、下図左の黒い都道府県では感染者数が対策病床数を上回っており、医療崩壊寸前の状態が続きました。これを考えると、GWを超えて緊急事態宣言を継続させたのは当然と感じます。
しかし、5/16になると、見て下さい、黒い都道府県が姿を消し、全体に色が薄くなっていて、安心な状況になってきたことがわかります。
今回、様々な経済活動の自粛に対しては、後半になるほど、「このまま自粛をしていて良いのか、経済活動を開始すべきではないのか」との意見が強くなってきましたが、少なくても5月上旬までは、まだまだ感染者増に対する医療機関の逼迫度が高く、医療者としては自粛を続けて欲しい、という気持ちだったのは確かです。また、病床だけ増えても、対応医療関係者の数が十分でなければ機能しないのは言うまでもありません。医療関係者の感染が増えてしまう事態が生ずれば一気に大変になることはありえます。*1
ちなみにデータはここを参照にさせていただきました。このページとオープンソースによるシステム作った方、凄いの一言です。
尚、よく言及される指標に再生産数(R)があり、この数字が1.0を上回れば1人が1人以上に感染させる力を持っているし、1.0を下回れば感染は終息していくというものです(図左)。*2
5/14専門家会議の資料でも実はこれが随分前に1.0を下回っている推測がされていたことがわかります(図右)、数値予想と実際の病床逼迫度は異なりますし、Rが小さくなっても実際の医療危機が去るまでにはタイムラグが生じますので、参考程度と思っていいのではと考えています。もちろん、小さくなればほっとします。
ただひとまず現在は医療崩壊の危機は脱したと言って良いでしょう。東京に私の同期がいてまさに最前線で医療をしているのですが、確かに余裕が出てきたとのことです。*3
さらに、感染者数の減少傾向と考え合わせれば、様々な活動を感染予防と組み合わせれば再開していい時期だと考えます。
なにより、新型コロナウイルスは、今後も必ず世の中に存在し続けます。撲滅はできないのかと思う方もいるでしょうが、まずできません(詳述は避けます)。
それならば、一部の方が仰るとおり、どう共存するか、です。
過度に恐れすぎずに、現実に可能な予防策を考えなければいけません。
飛沫感染を防ぐための予防策
そのための飛沫感染を防ぐ対策として何をすればいいでしょうか。
今の感染状況からすれば、どの人も感染者であるかのように恐れる必要は本来無いはずです。しかし同時に、一定程度自分も含めて誰もが感染者かもしれないという心構えを持たないといけない、という矛盾した状況に直面しています。
その状況に対応する予防をどうするか...NHKスペシャルの映像が大きなヒントになります。
「クルーズ船 感染はなぜ広がったのか」でとても興味深い実験がされていました。Youtubeのチャンネルを是非見てほしいのですが...
これは、ビュッフェで食事を楽しむ場面を想定し、1人の手に感染したウイルスと見立てた蛍光塗料を少量付けた後に、それが食事後、同じ場にいた30人にどの程度広がったか、を見たものです。
上段は何の対策もせずに、30分会食した結果ですが、敢えて人と話さず1人で食事をした人まで含めて、蛍光塗料は全員の手と3人の顔にまで広がっていました。
一方、下段では画像に示したように、取り分けを店員、トングは交換しながら、そして何より手指を清潔にすることを意識してよくおしぼりなどで拭ってもらうと...効果は劇的で、今度は顔への付着者は0、手への付着はなんと1/30にまで減少していました。
飛沫感染が、話す相手から直接浴びる他に、手指を介して広がっていくことを考えれば、対策をすれば感染リスクを格段に減らせることを大変明瞭に示してくれていると思います。
また、仮に多少ウイルスが手に付いたり、感染者と共に話をするような環境下であっても、感染に必要なウイルスには一定の量が必要ですからその量を減らすための方策が図れれば、感染リスクはやはり相当程度減らせるはずです。この考え方に関しては、京大ウイルス学者の宮沢孝幸先生の仰ることがとてもわかりやすいです。具体的には、頻繁に手を拭う、洗う(時間は短くても頻繁に)ということで、実はさっきと同じ考え方です。
「接触する新型コロナウイルスを100分の1に減らせ」Twitterが話題の宮沢孝幸准教授が提言(AbemaTIMES) - Yahoo!ニュース
さらに、これもNHKスペシャルからの画像です。
咳や大きな声での会話、激しい息遣いなどがあると、人の口からは飛沫が出るわけですが、その際にごく細かい飛沫(マイクロ飛沫)が空間を長時間漂い、感染力を持つことが推測されています。しかし、それは密閉空間での話で、右端のように換気をすることでみるみる排出されていきます。
というわけで、対面状況で私たちが心がけるのは、
・目の前の人からの飛沫をできるだけ少なくする(マスクをする、アクリル板越しに会話する、大声で会話しない、正面で食事しない、など)
・飛沫が停滞しないよう換気をして拡散させ、出た飛沫の濃度を下げる。
・手指や周辺環境にウイルスが付着したと想定して、頻繁に手指を拭い、洗う。
の3点が非常に重要なポイントと考えます。
対面業務時の具体的対策
感染状況が落ち着いてる(落ち着いている状況をどう考えるかは後述)ことは前提です。
その上で、スタッフも利用者の方も下記を守っていただくことを必要条件に考えています。
①来社前に検温し、37度以上の発熱をしておらず(断続的だったり、感染以外に考えられることがあれば応相談)、いわゆる風邪症状が無いことを確認。
②原則マスク着用で声量は控えめに
③換気
④来社時に手指のアルコール消毒をスタッフ指導下に行う
⑤退社時にも同様にアルコール消毒
⑥次の人のためにスタッフがテーブルやドアノブなど利用者が触れた箇所を消毒
⑦面接の際には、正面に相対さず、一定距離を保つ(80cm以上)
の7要件ほどを考えます。
特に弊社は、面接室が入り口からすぐで待合室も無く、対応するスタッフが原則1人なのはこういった感染対策をするにあたっては有利かもしれません。
各事業所で対応策は様々にはなるはずです。
例えばアクリル板なども考えました。アクリル板であればマスクを外し、近距離でも対面業務がOKではあります。ただ、利用者が帰った後の掃除に伴う感染リスクを考えるとどちらが良いのだろうと迷うところではあります。
現状の感染状況から考えると、実際には感染確率は相当低い(事実上0に近い)わけですが、ここは安心感を双方得られるか、という感情面の問題でもあろうかと感じます。
弊社では、上記対策をしながら対面業務を再開し、そして対面以外の手段、すなわち遠隔によるカウンセリングも工夫をしながら開始していく所存です。
感染状況がどうなればまた対面業務を自粛するのか?
長くなりましたが、もう少しです。
第2波、は必ず来ると思って心の準備をする必要があります。
参考になるのは1918年から20年にかけて世界を席巻したスペイン風邪(インフルエンザ)でしょうか。
1918年に第一波が来た日本では約2100万人(!)の感染者と25万人の死者を出し,翌年には再流行、このときは感染者は240万人と減りましたが、死者は12万人と致死率の大きな上昇が見られ、1920年まで流行が断続的に続きました。
今回も、専門家会議は言うまでもなく、第2波を始め、断続的な流行とそれを抑えるための行動自粛の繰り返しが予測されています。
次回このような波が来たときに、一番参考にすべき指標となるのは、病床逼迫度と考えます。実際、病床と医療従事者に余裕があれば、感染者数がいくら増えようと、きちんとした治療が可能なので、それほど切迫した心配は抱かなくても良いはずです。
今回の経験を踏まえた数字的指標を持っておけば、どの時点までは余裕を持って対応ができ、どの時点からは予防策に頼りすぎず、対面業務を自粛すべきか判断することが容易になります。
5/14の専門家会議の報告では、まだその点の指標が具体的数値としては出ていないようですので、ここでは発信力の強さを発揮している千葉市の熊谷市長の基準を弊社でも指標としたいと考えます。
おはようございます。昨日の感染状況、千葉市の判断基準、今後についてまとめました。基準としては以下の通りです。詳細はリンク先をご覧下さい。
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2020年5月13日
①病床数から見た新型コロナ対応における市内の医療状況
②感染経路不明の新規感染者の動向
③PCR検査数と陽性率https://t.co/tSvMbUcObP pic.twitter.com/2dxNWuMl8E
千葉市の基準は、
①病床数からみた新型コロナ対応における市内の医療状況
②感染経路不明の新規感染者の動向
③PCR検査数と陽性率
とのことです。その中で、とりわけ①を重視とのことでしたので私の考えとも一致しています。
千葉市は現在の状況を
このように色分けで判断を明示していくということです。わかりやすいですね。
ステージ2になった時、がまた自粛を検討する時期になるでしょう。
ただし、これは千葉市であり、弊社は習志野市ですから、千葉県全体、また東京を含めた関東全体の感染状況も参考にする必要があるのは言うまでもありません。
私たちは自信を持って良いはず
最後に、私は今回のコロナ禍を少なくても医療的にはしのぎきれたことが本当に良かったと感じています。
これは、一部の国の抜粋ですが、死亡者の倍加曲線です。(データは下記サイトから)
Coronavirus (COVID-19) Deaths - Statistics and Research - Our World in Data
この曲線が急峻なほど死亡者が短い期間で倍々になっていく、ということを示してます。第二のイタリアやニューヨークになると恐れられた日本は、ほぼ一貫して倍加曲線が急峻になることなく、10日以上で倍になる形で推移しました。
医療関係者、自粛要請に応じた一般国民、それに国のそれぞれが頑張った成果だと私は感じます。
よく、日本はわけがわからないが成功していると言われる部分がありますが、厚労省のクラスター対策班や新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーの方々のご尽力にはとても勇気づけられましたし、対策も日本独自でありながらも非常に有効だったと感じています。
Japan Timesの記事ですが、今回の様々な対策や結果の要因をJapan modelとして世界に発信しています。
まだまだCovid-19は性質的に未知な部分が大きいですし、日本の対策もどれが本当に良かったのか、何を改善すればよりよい結果が得られたのか、他にも結果に影響した因子があるのかと反省や考察を挙げれば切りが無いですが、ひとまずは、緩めの処置でこれだけの結果で一旦収束しつつあることを誇っても良いように感じています。
改めて、まだまだ現場でCovid-19に対峙してくださっている医療関係者の皆さんに感謝を申し上げると同時に、今闘病中の皆さんに一日も早い快復と、おかしな偏見に曝されないことを心から願っています。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
本記事は株式会社ライデックによって作成されました。できるだけ、簡単でわかりやすい言葉で記述しています。データの解釈や内容表現に誤りがあれば、コメント欄にてご指摘ください。また、弊社HPやTwitterにてさまざまな発達特性情報を発信していますので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。