こんにちは。ライデックの齊藤です。暑い日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。熱中症対策、コロナ対策、引き続き気をつけていきたいですね。
本日は「コンセンサスゲーム」について書こうかと思います。リワークや就労移行支援で働いていた時、プログラムの一貫としてよく実施していました。私の好きなゲームの一つです。
コンセンサスとは
コンセンサスは「意見の一致。合意。」を意味します。「合意形成(コンセンサス・ビルディング)」とも言われます。
「コンセンサス」
多様な利害関係者の意見の一致を図ること。特に議論などを通じて、関係者の根底にある多様な価値を顕在化させ、意思決定において相互の意見の一致を図る過程のことをいう。
赤文字にしたところがポイントかと思います。多数決でもなく、独裁でもなく、賛成・反対の主張でもなく、“議論を通して皆の意見の一致を図る”ことが大切であると。
主には、ビジネスシーンや社会活動(例えば公共政策、公共事業など)の場でよく使われます。例えば、地域住民と行政の話し合いの場面などがテレビでも流れたりしますが、まさにコンセンサスを得るための取り組みですね。
コンセンサスゲーム(NASAゲーム)
上記で述べたコンセンサスのポイントを元に進めていくゲームが、コンセンサスゲームです。色々なシリーズがありますが一例としてNASAゲームを挙げてみます。
<ストーリー>
あなた方は宇宙船に乗って月面に着陸しようとしている宇宙飛行士です。
月面には母船が待っているのですが,機械の故障で母船から約200マイル(約320km)離れた所に不時着してしまいました。
不時着時の衝撃で宇宙船はほとんど壊れ使用不能となりました。
しかし、次の15アイテムは破損を免れて完全なまま残っていました。
「まずは、重要なアイテムを見極めよう」ある宇宙飛行士が言いました。「冷静に判断するため、まずは各自で考え、最後は全員で話しあおう。」
母船に無事たどりつくため,15アイテムの中で必要なものから重要度の高い順に1番から15番までの順位をつけなさい。(最も優先度が高いものが1となります)
<アイテム>
・マッチの入った箱 ・宇宙食
・ナイロン製ロープ(15m) ・落下傘の布(パラシュート)
・ソーラー発電の携帯用暖房器 ・45口径ピストル(2丁)
・粉ミルク(1箱) ・酸素ボンベ45kg(2本)
・月からみた星座表 ・救命いかだ(救命ボート)
・磁石コンパス ・水(19リットル)
・信号用照明弾 ・注射器入りの救急箱
・ソーラー発電式FM送受信機
進め方は、まずは個人で考えます。次にグループで考えます。もちろんコンセンサスを得るための話し合いなので、(極力)満場一致の結論を出してもらいます。最後にグループ発表をします(優先順位とその理由を発表)。そして全体を通しての振り返りをします。いくつかのグループで発表し合えると、色々な回答が聞けて面白いです。
ちなみにこのゲームは、NASAが模範解答を用意しているので、自分たちの回答と比べることもできます。これまで何回かこのゲームを実施しましたが、模範解答とぴったり当たっていたグループはまだいないですね。(気になる方、ぜひネットでチェックしてみて下さい)
見えるものから見えないものを知る、というゲーム
コンセンサスゲーム、議論をしないことには結論に辿り着けない内容かと思います。リワークや就労移行支援で実施した際は、「議論する機会」「多様な価値があることに気づく機会」「意思決定・意見の一致をする経験」すべてのポイントを経験してもらうことに重きを置いていました。
コンセンサスゲームで見えるものは情報。見えないものは参加者の価値観や情報の捉え方。ゲームの内容を読んだ時、その解釈の仕方や考え方は様々なものかと思います。
意見の一致を図るために、見える情報を元に多くの議論を交わしていきますが、その過程で参加者たちは互いの価値観や意図や目的を知り、各々の考えや解釈の摺り合わせしながら全員一致の結論に辿り着かなければなりません。とても大切なのでは、と思います。
“見えないものは言葉にしないと見えるようにならない” “思っているだけでは相手に伝わらない”自己発信をする練習にもなりますし、相手のことを知る機会にもなります。
参加者からの感想は、ゲーム内容についてはもちろんのこと、「久々にたくさん発言した」「いろいろな考えを知った。自分の考えの変化を感じ取れた。」「一緒に考えることが楽しい」等、コンセンサスについての感想も数多くありました。
またスタッフとしてゲームの進行をモニタリングしていると、個人個人の役割分担ができ上がっていくのを見ることができます。
自然とファシリテーターをやっている人、サブファシリテーター向きな人、発言は少ないが行き詰まった時に力を発揮する人、多角的に状況を見ている人、記憶力の強い人、機転が利く人、速記が得意な人、等々。
参加者たちは議論に夢中なので、そこまで相手の動向に目を向ける事はありませんが(そもそもゲーム中は、それは求めていないので)、振り返りの際にスタッフからその時の様子をお伝えすると、“自分はそんな感じでゲームしていましたか!?”とよく驚かれます。
ゲームを通して気付かなかった自分の姿を発見するかもしれない!?、これも見えないものを知る、ですね。
まとめ
リワークでも就労移行支援でも、そこを利用している方たちは一時的に社会参加から距離を取っている状態の人が多いです。会話をする機会、意見を交わす機会、複数人で話し合う機会はずっと減ってしまい、対人関係は限定的になりやすいです。
そういったこともあり、このような会話や意見交換を活発化させるゲームは、参加者の皆にとっては新鮮であり、やり応えを感じるものでもあり、なかなか評判は良いものでした。
コンセンサスゲームは、参加しても楽しいですし見ているだけでも楽しめる、また、訓練の一貫としても取り入れることもできます。終わったあとはけっこうな疲労感を感じるかもしれませんが、難しくて面白い、ぜひ挑戦してほしいおすすめのゲームです。
それでは、また。
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発達特性研究所 (RIDC: Research Institute of Developmental Characteristics)
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