代表です。
新型コロナの話題も最近は、GOTO関連のニュースを見る機会が増えてきましたね。
ただ、医療に直接関わっている医師に話を聞くと、やはり今後冬にかけてインフルエンザと重なるとどうなるのか、最近感染者が増している欧州の状況など考えると一定の注意を持続していくことが必要には感じています。
さて、今日は日中の眠気に関しての論文紹介です。
人間の睡眠−覚醒リズムをある条件下で調べてみると、午後に必ずといっていいほど眠くなることがわかります。
そう、よく「お昼食べると眠いよねえ」なんて昼食後に眠くなることから、昼食=眠気を誘う、と考えがちですが、実は多くの人は、昼食に関係なくちょうど午後のお昼時を過ぎたあたりで生理的に眠くなるリズムを持っている、のです。
しかし、ADHD特性のある方を診ていますと、日中の眠気がとりわけ強い方がいるのに気づきます。
今日ご紹介するのは、それについての日本人研究者による研究です。
要約
覚醒不全はADHDの不注意のメカニズムと関連していると推測されてきました。しかし疫学研究はありませんでした。筆者らはADHDの可能性がある成人における日中の過度の眠気(EDS)の有病率、眠気とADHD症状の関連を調べました。
日本人20歳から69歳を対象としたインターネットを用いた調査でADHD、自閉症スペクトラム障害、睡眠の質に関する調査を行いました。
結果、中程度・重度のEDSである人はADHDと考えられる人の中でより多く存在することが示唆されました。また、ADHDとEDSはその他の睡眠障害の有無に関係なく存在することが示唆されました。ADHDとされる人の中で重度のEDSと考えられる人は、不注意スコアが高い事も示唆されました。
もともと子供ADHDと睡眠については多くの報告があり、ADHDの子供に睡眠障害があるとき、日中の過度の眠気(EDS)が関与していることは知られていましたが、成人期においてはしっかりした調査がありませんでした。
そんな背景のもと、この研究の要点は以下の2つ。
・成人のADHDでは睡眠問題に関係なくEDSが存在すること
・不注意症状がEDSと関係している
です。
インターネットを介した調査で、20歳から69歳までの日本人を対象に9822人から回答を得ており、これは大きな数字ですね。その中で、これは厳密とまでは言えませんが、ASRSという臨床上よく使われる質問紙を用いて一定点数以上をADHDと分類し、その他自閉症スペクトラム、うつ病の自己評価も行っています。
その結果です。
ADHD特性の強い方は、中等度以上の眠気を日中に感じ、睡眠障害のスコアも高かったのです。
そして、どうやら、その過度の眠気が不注意特性と関連が高いようです。
先にも記したように、ADHDの方を外来で診ていると日中の眠気が強い方が多いことに気づきます。その意味で、この研究はその実感を裏付けてくれる報告でした。
でもなぜADHDで眠気が強いのか、ということに関しては答えが得られていません。
睡眠の質が何らかの理由で悪いのか、不注意が強いというのは言い換えれば外界からの情報に脳が振り回されてしまっていて、それによって疲労を覚えているのかもしれませんし...基礎的な研究はまたいずれ紹介したいと思います。
いずれにせよ、そういったADHDの眠気が、コンサータを始めとする抗ADHD薬によって解消し、注意力を上げることの一助にもなっていることは指摘しておきたいところです。
【PSQIについて】
この研究で睡眠障害の判定に使われた、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)は「睡眠障害」や「睡眠の質」を評価するために開発されました。
国立精神・神経医療研究センターが運営する“睡眠医療プラットフォーム”では睡眠に関するセルフチェックが行えます。この論文で用いられた「朝方夜型判定の調査票:DTS」や「睡眠障害の評価:PSQI」が行えます。また睡眠障害についてわかりやすく説明しているので興味ある方は見てみてください。